もし福島県がBA・5対策宣言出したら...外出自粛に高齢者複雑

 
郡山市で開かれた吟詠コンクール。県内外の高齢者が参加する中、さまざまな感染対策を講じた=7月30日

 新型コロナウイルス感染者増を受け、政府が示した「BA・5対策強化宣言」には、自治体が高齢者に外出自粛を呼びかけることができるとする内容が盛り込まれた。これに対し、県内の高齢者は「やむを得ない」と理解を示す一方、高齢者に一律の自粛を求める内容に「違和感がある」などと疑問の声も上がっている。

 郡山市で7月30日に開かれた吟詠コンクール。県内を中心に集まった出場者の多くは高齢者だ。会場では1時間ごとに換気を行い、場内での会話を禁止したほか、80歳以上の出演順を前倒しし、早めの帰宅を呼びかけるなど感染対策を徹底した。出場した棚倉町の今宮秀人さん(94)は吟詠のほかにも多くの趣味を持つが、感染者が増え始めたころから、自ら行動を制限しながら楽しんでいる。高齢者への自粛要請について「自分なりに対策をして元気に活動できており、一律に自粛を求められるのは違和感がある」と困惑する。

 自治体による外出自粛の呼びかけの対象は「混雑した場所や感染リスクが高い場所」となる。強化宣言は感染者用の病床使用率が50%を超えるなど医療現場の負担が高まっている都道府県が出せるようになる仕組みで、本県に隣接する宮城県が出すことを決めている。

 「(もし本県に宣言が出た際は)通院や買い物などある程度の外出は必要だが、健康や安全面を考えると行動を自粛するのはやむを得ない」。飯舘村で同30日に開かれた花火大会に足を運んだ同村の長沢茂さん(80)は一定の理解を示す。一方で「(花火大会のような)楽しい行事や集まりに足を運べなくなるのは残念」と不安も口にする。

 福島市で同30日に開かれた花火大会を観覧した同市の武田安夫さん(69)は2日に4回目のワクチン接種を予定。外出時は屋外でもマスクを着用し、店舗に入る際は手指消毒を必ず行う。「ワクチン接種や基本的な対策をしていれば、外出自粛は必要ないのでは」と話した。

 一方で、感染者が急増する状況に会津若松市の男性(71)は「夏休みは人の移動が多くなり、これからもっと感染者数は増えるのではないか。経済の回りは悪くなるだろうが、自粛は徹底した方がいい」との意見だ。

 いわき市の勝沼哲郎さん(65)は「普段から気にせず外出している人は、宣言が出ても気にしないのではないか」と宣言の実効性に疑問を持つ。週末に市内で開かれた飲食イベントを訪れたが、普段はできる限り外出を控え、家で過ごす時間が多いという。「感染対策をしている人は、これ以上気を付けようがない」と肩を落とした。

 東洋大の早坂聡久准教授(社会福祉学)は「行動制限は病床逼迫(ひっぱく)を回避するために必要」と評価する。一方で、デイサービスの利用控えなどが起こり、身体能力の低下や、孤立が強まる可能性を指摘。「介護事業者が高齢者のSOSを見逃さないようにし、自治体は病床使用率など感染状況を見極めた上で、居場所などの運営を柔軟に考えてほしい」と強調した。