福島第1原発の処理水放出設備計画了承 福島県と大熊、双葉町

 

 東京電力福島第1原発で発生する処理水の海洋放出方針を巡り、内堀雅雄知事と第1原発が立地する大熊町の吉田淳町長、双葉町の伊沢史朗町長は2日、処理水放出設備の設置に向けた東電の計画を了承し、県庁で面会した東電の小早川智明社長に伝えた。3氏は処理水の元となる汚染水発生量のさらなる低減など、了承する上での要求事項の徹底を求めた。

 了承は、東電と締結している廃炉の安全確保協定に基づく「事前了解」と呼ばれ、東電が設備工事に着工するために必要な手続き。東電は、放出用の海底トンネルの整備に向けた地質調査など事前準備を既に行っており、了承を得たことで海底トンネルなど本体工事に着手する。3日に工事予定を公表する。

 内堀知事は2日、県庁で開かれた原子力関係部局長会議で、県原発安全確保技術検討会の報告書を踏まえ了承を決定した。面会では、原子炉建屋などへの地下水や雨水の流入を抑制するなど抜本的な汚染水対策や汚染水を処理する過程で生じる汚泥などの廃棄物の安全な処理・処分を要請。処理水に含まれる放射性物質を明確にするなど、要求事項の確実な実施も求めた。

 吉田、伊沢町長は両町の特定復興再生拠点区域(復興拠点)の避難指示解除を念頭に、処理水処分を含めた廃炉作業を安全かつ着実に進めるよう要請。吉田町長は放出設備の長期にわたる稼働が見込まれるとして、正常に機能を保てるよう万全な体制の構築、伊沢町長は設備設置の進行状況を定期的に報告することなどを求めた。小早川氏は「要求を重く受け止め誠実に取り組み、進捗(しんちょく)を適宜報告する」と応じた。

 内堀知事は面会後の報道陣の取材で、処理水放出について「県民、国民の理解を十分に得られていない」として、3日に萩生田光一経済産業相を訪ね、国が前面に立った取り組みを求める考えを示した。

 処理水の海洋放出を巡り東電は、処理水に含まれる放射性物質トリチウムの濃度が国の基準の40分の1未満となるよう薄めた上で海底トンネルを通して沖合約1キロから放出することを計画している。来春をめどに始めるとしており、放出終了まで数十年かかる見通し。

 「理解醸成」へ課題残る

 【解説】内堀雅雄知事と吉田淳大熊町長、伊沢史朗双葉町長は、東京電力が処理水を海洋放出するための設備の設置を了承した。処理水処分を巡る手続きは一つ前に進んだが、東電と政府が抱える「理解醸成」という、放出に向けた大きな課題は解決しておらず、来春をめどとする放出が始められるかは依然不透明だ。

 県は昨年12月に東電からの「事前了解願い」を受け、専門家や浜通り自治体を交えた計16回の会合で東電の設備計画について確認し、安全が確保されているとの報告書を作成した。これを踏まえ内堀知事らは了承したが、放出そのものを容認したわけではない。

 放出に向けては、風評を懸念する漁業者をはじめ国内外の理解が不可欠だ。2日、東電の小早川智明社長との面会後、伊沢町長が「理解のない中で放出はしないということをしっかりやってもらうことに尽きる」と述べたように、東電や政府は理解を得るための取り組みを続ける必要がある。

 小早川氏は「安心につながるよう、懸念を持つ人の立場に応じた説明を行う」と述べ、放出までに多くの人の理解を得るとしている。一方で「どこまで理解を得る必要があるか」について明確な基準は示していない。国内外の理解度があいまいなまま放出されることがないよう、どれだけ理解が得られたかを分かりやすく発信することも政府と東電に求められている。(報道部・鹿岡将司)