国の風評対策注視 海洋放出手続き前進、漁業関係者不安根強く

 
船主を務める明神丸に乗る高橋さん。「処理水の海洋放出は漁業の復興を後退させる」と話した=相馬市

 「残念の一言」「国のこれからの対応が重要だ」。県などが東京電力の処理水設備設置計画を了承し、海洋放出に向けた手続きが進んだ2日、県民からは海洋放出が風評被害につながることへの根強い不安の声や、風評対策を確実に実施するよう改めて国に要求する意見などが聞かれた。

 「海洋放出反対という立場にいささかも変化はない」。相馬市の漁師で原釜機船底曳網船主会の高橋通さん(67)は語気を強める。福島第1原発事故後の試験操業が昨年3月に終了し、本格操業に向けた移行期間が始まっており「次の段階に移ろうとしているときに、処理水の海洋放出は漁業の復興を一歩も二歩も後退させる」と訴える。

 政府や東電による説明会に参加し、処理水の安全性について問いただしたが「明確な答えが返ってこない。風評対策についても具体的な話がない」と不信感を募らせている。

 漁業に関係する事業者の思いは複雑だ。いわき市の水産品販売業「おのざき」4代目の小野崎雄一さん(26)は「(放出は)解決しなければならない問題。小売りという立場からは『安全』という議論を信じて受け入れざるを得ない」と話す。その上で「(国が)これからどう動くかが重要。しっかり風評対策を行っているかどうか見ていきたい」と注文を付ける。

 同市平薄磯で民宿と海の家を経営する鈴木幸長さん(69)も「タンクの置き場が残り少ない状況を考えれば理解はできる」とするが「国や東電が行うとしている対策についての説明には納得はしていない。注意深く状況を見守りたい」と思いを語る。

 第1原発が立地する双葉町の行政区長会長の木幡敏郎さん(72)は「県、双葉、大熊両町の判断は復興を進める上でやむを得ないと思うが、漁業関係者らの心境を考えると複雑。国などは対策をしっかりと打ち出してほしい」と漁業者を思いやった。

 観光、農業「丁寧な説明必要」

 県内各地の観光関係者、農業従事者からは、丁寧な説明と徹底した風評対策を求める声が上がった。観光誘客などに取り組んでいる七日町通りまちなみ協議会(会津若松市)の渋川恵男会長(75)は「処理水放出で観光関係への影響は間違いなく出てくる」と懸念。「いろいろな意見がある。国や東電は理解を得るため、とにかく丁寧に説明することが必要だ」と話した。高湯温泉観光協会(福島市)の遠藤淳一会長(67)は「次の世代に先送りできない問題だ」と受け止めた上で「科学的に問題がなくても、心理的な影響が懸念される。風評被害が発生したときは必ず補償してほしい」とくぎを刺した。

 郡山市で水稲や繁殖和牛を手がける佐藤農場の佐藤靖浩社長(40)は「今回の判断を理解できないわけではないが、風評被害が拡大して11年前の状況に戻らないようにするため、国民に対して十分に説明してほしい」と求めた。