イノシシ突然変異「なし」 帰還困難区域生息、福島大准教授発表

 

 福島大共生システム理工学類の兼子伸吾准教授は3日、東京電力福島第1原発事故に伴う帰還困難区域に生息するイノシシの遺伝的な影響を調査した結果、事故後数世代が経過しても、DNAの塩基配列に事故の影響による突然変異は確認されなかったとする研究内容を発表した。

 大学の定例記者会見で発表した兼子氏は、「突然変異で緑になったイノシシ」など、原発事故の影響を巡り根拠に基づかない海外報道があるとし、「汚染の程度が理解されておらず、現状を伝えることが重要だ」と指摘した。

 事故の影響による突然変異が確認されなかった理由については「(事故に起因する放射線量が)低線量だったためと考えられる」と述べた。

 兼子氏は、福島大大学院に所属していたドノバン・アンダーソン氏(弘前大被ばく医療総合研究所特任助教)らとともに2016~19年、帰還困難区域に生息する307頭のイノシシを調査した。このうち191頭の遺伝子について、チェルノブイリ原発事故で突然変異が報告されたツバメの遺伝子部分と同じ部分を解析した結果、変化は確認されなかった。兼子氏は「さらに詳細な調査が必要だが、集団レベルでの遺伝的影響はないと考えられる」と述べた。

 また、イノシシの生涯被ばく線量は0.1~700ミリシーベルトと推定され、内部被ばくよりも外部被ばくの影響が大きかった。このイノシシの肉(総セシウム量の平均値が1キロ当たり5400ベクレル)を日本人の年間の豚肉摂取量(12.9キロ)に置き換えて食べても1ミリシーベルトを超えないとし、「数値上では、消費可能な範囲に入りつつある」と指摘した。