停電、命救った共助 記録的大雨、HV車から酸素吸入器に電気供給

 
(写真上)ハイブリッド車を使い東條さんの危機を救った高橋さん。「力になれて良かった」と振り返った(写真下)停電後、ハイブリッド車からの電源で稼働した酸素吸入器。東條さんは安心して朝を迎えることができた

 3日から4日にかけて降った記録的な大雨による重大な人的被害は、6日現在県内で確認されていない。背景には、土砂崩れによる孤立化や停電など次々と降りかかる困難を助け合いの精神で乗り越えた住民たちの存在があった。

 喜多方市山都町の相川地区の東向集落で3日夜、近くを流れる五枚沢川が一部で越水。集落で避難の呼びかけが始まった。東條隆さん(89)は体が不自由で常に酸素吸入器を使用しなければならず、同居する娘夫婦の鈴木康夫さん(66)と富美江さん(59)は一家での避難をためらっていた。

 同日午後11時ごろ、同地区で停電が発生。雨も強くなり、周囲の世帯は続々と避難を始めた。東條さんの酸素吸入器は停電で電源を失い、非常用の酸素ボンベに切り替えた。「そのうち電気も回復するだろう」。最初は深刻に考えていなかったが、その後、電気の復旧の見通しが立たないとの情報が入り、鈴木さんらは青ざめた。

 備えていた酸素ボンベは2本のみで、1本当たり2~3時間しかもたない。慌ててメーカーに連絡したが、土砂崩れによる通行止めで届けに行くことができないという。「この2本が切れたらお父さんの命が危ない」。焦りと不安が押し寄せた。

 その時、一軒一軒に避難を呼びかけて回っていた消防団員の高橋友和さん(42)が現れた。事情を聴いた高橋さんは自身のハイブリッド車(HV)から電気を取り、コードリールにつないで酸素吸入器を稼働させた。「避難できない東條さんの力になりたい」。その一心だった。

 停電は4日午前3時ごろに復旧。幸い、東條さん方に浸水などの被害はなかった。鈴木さんは「避難せずに家にいるだけで不安だったのに、停電後は怖くて仕方なかった。機転を利かせてくれた高橋さんは命の恩人だ」と感謝する。

 東日本大震災の時にハイブリッド車から電源を取ったニュースを見て覚えていたという高橋さん。「集落で避難していないのは東條さん方だけだったので心配だった。災害時にも活用できると購入したハイブリッド車が役に立って良かった」と胸をなで下ろした。

 孤立集落、食事で協力

 同市山都町の早稲谷地区は、崩れてきた土砂が道路をふさぎ一時孤立状態となった。同地区に住む会社員五十嵐桂造さん(63)は、食べ物を買いに行くことができない状態に陥った。一時停電もしていたことから冷蔵庫の食材にも影響が出た。

 このため、地区が孤立状態にある間、近隣の家庭で協力して食事の準備などに取り組んだという。五十嵐さんは「困ったときはお互いさま。近所で助け合うことができて良かった」と話した。