「理解なしに放出せず」 処理水巡り経産相明言、県漁連会長と会談

 

 西村康稔経済産業相は21日、福島県を訪れ、いわき市で就任後初めて県漁連の野崎哲会長と会談した。西村氏は東京電力福島第1原発で発生する処理水の海洋放出方針を巡り「関係者の理解なしには処分しないという方針で臨む」と明言し、地元漁業者との約束を順守する考えを伝えた。理解醸成に向け「漁業者の気持ちに寄り添い、信頼関係を構築しながら進めたい」と語り、対話などを通じて関係者との信頼関係の構築に努める姿勢を示した。

 処理水の海洋放出方針を巡っては、漁業者を中心に風評への懸念から反対意見が根強い。野崎氏は会談で「反対の立ち位置を堅持していきたい」と改めて強調した。一方、県民として廃炉の進展を願っているとも言及し「対立という構図ではあるが、対話の道を模索していきたい」と応じた。

 その上で、野崎氏は「事業の内容などについて国民や消費者の理解を得られるように説明を積み上げてほしい」と西村氏に求めた。

 政府と東電は来春をめどに処理水の海洋放出を始める方針を崩していない。しかし、地元漁業者との間で処理水を巡って「関係者の理解なしにはいかなる処分も行わない」との約束を交わした経緯がある。政府と東電が約束を守るには▽漁業者をはじめ、国内外の理解を得られるかどうか▽関係者の理解を得られたと、どのように判断するか―が焦点となる。

 西村氏は会談後、視察先の浪江町で報道陣の取材に応じ「関係者の理解」について「特定の指標を持って数字で一律に判断することは難しい」との認識を明らかにした。その上で「繰り返し説明を重ね、安全対策や風評被害対策、支援策などの説明を粘り強く徹底して行っていく」と述べるにとどまった。

 東電は既に海洋放出設備の工事に入り、準備を着実に進めている。会談後、取材に応じた野崎氏は、漁業者の理解が得られていない状況で着工したことを受け「非常に残念だ。関係者の理解を模索すべきだったと思う」と批判した。「(漁業者の)理解を進める状況にはない」との認識を表明した。政府、東電との対話の方向性については「福島の漁業が継続できる道を探すしかない」と述べた。

 東電の計画では、処理水に含まれる放射性物質トリチウム濃度を1リットル当たり1500ベクレル未満になるよう海水で薄め、基準値を下回ったことを確認した上で、海底トンネルを通して第1原発の沖合1キロ地点から海に放出するとしている。