加速時、船首が浮き視界悪化 猪苗代湖ボート事故・調査報告書

 

 会津若松市の猪苗代湖で2020年9月、プレジャーボートが遊泳客に突っ込み児童ら3人が死傷した事故で、運輸安全委員会は25日、船長が友人のボートを避けて追い越そうと加速した際、船首が浮き上がって前方の見通しが悪くなり、男児らに気付かなかった可能性が高いとする調査報告書を公表した。過去の経験から現場に人が浮かんでいると思わず目視確認をしなかったとも指摘した。

 事故は20年9月6日午前11時ごろ発生。地元自治体などでつくる協議会は現場水域を航行や遊泳を禁じる保全誘導ゾーン(利用禁止区域)としていたが、ルールをまとめたマップにその表記がなかった。ゾーン分けについて利用者や事業者に十分に周知されておらず、プレジャーボートや水上バイクが混在して航行していたことも事故の要因だとした。

 報告書では、事故前にボートが漂泊していたとき、約190メートル離れた現場付近にあるブイが見える状況にあった。その後加速し、現場付近に接近した際の時速は約16.7キロだった。再発防止策にも触れ、船舶航行区域でも一定の区間で徐行運転を義務付けるほか、見通しを確保した適切な見張りを立てること、利用者に分かりやすい利用区分の制定などを挙げた。

 事故では、船長でいわき市の会社役員佐藤剛被告(45)=業務上過失致死傷罪で公判中=が操縦するボートが、ライフジャケットを着て湖面でレジャーの順番待ちをしていた千葉県野田市の小学3年豊田瑛大(えいた)君=当時(8)=らに衝突、瑛大君が死亡するなどした。

 「利用ルール周知徹底を」

 25日に公表された猪苗代湖のプレジャーボート事故に関する運輸安全委員会の調査報告書では、再発防止策が示された。事故は全ての船舶が航行してはならない「保全誘導ゾーン(利用禁止区域)」で発生したことから、事故当時の猪苗代湖利用区分マップの内容に不備があったことに触れ、再発防止へ利用ルールの周知徹底を挙げた。

 猪苗代湖は各浜で航行可能な区域や利用区分が決められている。事故が起きた中田浜は東岸に遊泳場、西岸にマリーナがあった。西岸の湖岸から沖合150~200メートルまでが利用禁止区域で、事故が起きた現場近くのブイ列は湖岸から82~137メートルの場所に敷かれていた。ただ、猪苗代湖水上遭難対策協議会が作成した事故当時の猪苗代湖の利用区分マップには、中田浜の利用禁止区域が表記されていない部分があった。

 報告書によると、事故を起こしたボートの船長らは湖岸側に進入してはいけないという認識ではあったが、利用禁止区域については十分に把握していなかったという。

 同対策協議会は、「猪苗代湖水面利活用基本計画推進協議会」が取りまとめた情報を基に、昨年7月、新たに利用禁止区域や岸からの距離などを明記した更新版のマップを発行している。

 また、事故後、推進協議会の下部組織である会津若松地域部会の構成団体がそれぞれに事故防止対策を講じている。中田浜船舶安全協会と湊町観光協会は、船舶航行区域に航行ルートを示す誘導ブイを敷設。県は利用禁止区域や船舶誘導区域、船舶航行区域などを示す「中田浜の利用ルール」の掲示板を設置した。事業者は最新版のマップを利用者に配り、ルールの周知を行っている。

 代理人弁護士「当否は裁判で」

 佐藤剛被告の代理人を務める吉野弦太弁護士は「書面が到着してから内容を確認します。中身の当否については刑事裁判で主張、立証する予定です」とコメントを出した。