【復興拠点解除・双葉】人の温かさ感じる町に 戸別訪問続ける

 
準備宿泊している町民の家を訪れ、近況を聞きながら健康づくりなどを助言する佐藤教授(中央)

 暮らしの保健室 佐藤美佳さん 58歳

 「こんにちは。元気だった?」。福島医大大学院教授の佐藤美佳(58)は、双葉町内で準備宿泊中の町民を戸別訪問する「ふたば暮らしの保健室」の活動を今年2月から続けている。今月25日は、町の保健師と共に細沢靖(77)の住まいを訪れた。

 「隣の大熊町にね、元の小学校にインキュベーションセンターができたんだって」「そんな難しいことは分かんないな」。佐藤の言葉に、細沢は笑顔で答える。お互いが前回の訪問からの間に起きた出来事などを語り合う中で「ちゃんとお薬もらってるの?」などと健康面で必要なことを聞いていく。保健師も「今度、町の総合健診も受けてよね」と語りかける。

 暮らしの保健室は、看護師などの専門家が健康や介護などの相談を受け付ける地域に密着した活動として、全国50カ所以上で展開されている。双葉町の場合は、地域事情も踏まえて祝日を除く毎週木曜日の戸別訪問と、JR双葉駅前のコミュニティーセンターで行われる月1回の集会「ヘルス&レクふたば」を活動の柱とする。まだ医療機関が開設されていない町で、住民の健康維持や見守りの役割を担っている。

 佐藤は「訪問し始めた時は、みんな『何しに来たんだ』という感じでした」と振り返る。足しげく通うにつれて訪問時に会話が続くようになり、集会にも顔を出してくれるようになったという。佐藤は「さまざまな書類が届くけれど、読むのも大変だということが多い」と指摘する。時には町や政府の出先機関などに連絡し、住民が抱える課題の解決につなげることもある。

 「一人でも多く」

 特定復興再生拠点区域(復興拠点)の30日の避難指示解除を前に、佐藤の元には先行して町で暮らす準備宿泊者の声が寄せられている。「一人でも多く、双葉に住んでいた人が戻ってくるといいね」。夜になると人や車の行き来がなくなり、もの寂しい思いをしてきた実感がこもっている。

 佐藤は25日、町内に整備された公営住宅の内覧会にも参加した。準備宿泊の参加者と同様に、高齢者が多いであろう帰還者にとってバリアフリーの環境は担保されているのか。佐藤は独自の視点で確認した。

 「帰ってきて良かった、と思ってもらうには、コミュニティーづくりが欠かせない。暮らしの保健室の活動が、その一助になれば。話し相手が欲しい時などには、気軽に利用してほしい」。避難指示解除後は、拠点を町役場新庁舎に移して活動を継続する。かつての双葉町民、そして新しく加わる住民にとっても、温かさを感じるまちづくりを進めてほしい。双葉での暮らしに向き合ってきた、佐藤の願いだ。(文中敬称略)

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 双葉町 町内に立地する東京電力福島第1原発の事故で、埼玉県加須市に役場機能を移した。町内の大半が帰還困難区域となり、町は2013年6月にいわき市に役場機能を戻したが、県内の被災市町村で唯一、全町避難が続いていた。30日に避難指示が解除される特定復興再生拠点区域(復興拠点)はJR双葉駅周辺の約5.55平方キロで、町の総面積の約1割。解除に先立つ準備宿泊は今年1月から始まり、これまでに延べ52世帯85人が参加している。