【復興拠点解除・双葉】新しく関わる人も大事 ダルマ市、伝統守る

 
来年の双葉ダルマ市が開かれる予定のJR双葉駅前に立ち「また新しい伝統が始まると思います」と語る中谷さん

 「夢ふたば人」会長 中谷祥久さん 42歳

 「いろんな人が関わることで、また新しく始まっていく」。双葉町役場の新庁舎が整備されたJR双葉駅前で、町民有志の会「夢ふたば人」の会長を務める中谷祥久(42)が穏やかな表情で語る。中谷と仲間たちは避難先のいわき市で、伝統行事の「双葉ダルマ市」を守り続けてきた。30日の特定復興再生拠点区域(復興拠点)の避難指示解除を受け、来年1月には双葉駅前にダルマ市が帰ってくる予定だ。

 双葉ダルマ市は、江戸時代から続く双葉町の新春恒例の祭りだった。双葉駅前の長塚商店街通りが歩行者天国になり、縁起物を売る露店が軒を連ねた。「巨大ダルマ引き」では、町民らが二手に分かれてダルマを引き合い、一年の豊年満作や商売繁盛を占った。中谷も地元消防団員として古里の祭りを支え、開催を心待ちにする一人だった。

 2011(平成23)年1月のダルマ市に集まり笑顔を見せていた双葉町民は、同3月に発生した東京電力福島第1原発事故で全国に散り散りになった。中谷も双葉を離れ、いわき市南台の仮設住宅に避難した。

 涙で再会喜ぶ姿

 先行きが見えない中、同じ仮設住宅にいた消防団仲間と酒を酌み交わしていた時に「双葉と言えばダルマ市だ。やればみんなが集まるんじゃないか」と盛り上がった。中谷らは「夢ふたば人」を結成し、12年1月に自分たちでダルマ市を開くことにした。開催当日、双葉町民が各地から集まってきた。お年寄りが涙ながらに再会を喜ぶ姿を、中谷は今も覚えている。

 「巨大ダルマ引き」も復活させ、19年からは会場を同市の復興公営住宅「勿来酒井団地」に移した。新型コロナウイルス感染拡大の影響で21年はダルマ販売イベントに切り替えたものの、有志によるダルマ市は伝統を引き継ぎ、避難先の双葉町民を勇気づけてきた。その経験を頼りにされ、現在は双葉のまちづくり会社の理事も務めている。

 中谷は、町の今後について「企業誘致が進む中野地区で働く『新しい双葉町民』が増えるでしょう。その人たちと元々の町民がうまくやっていければと思う。そうしないと新しい双葉は生まれない」と予測する。来年のダルマ市は、実行委員会により開催される。「今まで関わり方が分からなかった町民も、新しく関わってくれるかもしれない。そういった人も大事にしないと」と語る。

 「若い力が必要」

 もう一つ、願いがある。「小さい子どもたちに、双葉で開催するダルマ市を『伝統の祭りだよ』と見せてあげたい。双葉町がある限り伝統は守っていかなければならないし、そのためには絶対に若い力が必要だから」。人と人とのつながりこそが、双葉の将来を切り開くと信じる。(文中敬称略)

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 双葉町の避難指示解除 双葉町は東京電力福島第1原発事故により、避難指示解除準備区域と帰還困難区域に分けられた。このうち、避難指示解除準備区域だった中野、中浜、両竹の3地区は2020年3月に避難指示が解除された。特に中野地区は、町民が本格帰還する前から雇用の場を創出するための産業拠点に位置付けられ、積極的に企業誘致が進められてきた。中野地区には、双葉町産業交流センターや東日本大震災・原子力災害伝承館なども整備されている。