【復興拠点解除・双葉】帰還して孤立防ぎたい 自治会長経験生かす

 
双葉町民が暮らす復興公営住宅「勿来酒井団地」で自治会長を務める国分さん。町外コミュニティーをまとめた経験から「震災の教訓を反映し帰ってきたいと思える町にしなければならない」と話す=8月15日、いわき市

 勿来酒井団地自治会長 国分信一さん 72歳

 「残りの人生をどうするか考えた結果です」。双葉町民が身を寄せるいわき市内の復興公営住宅「勿来酒井団地」で自治会長を務める国分信一(72)は、町への帰還を決めた。3年余りの自治会長としての経験が、双葉の再生に必要となるのではないかと思い定めたからだった。

 本宮市出身で、二本松工高を卒業後、東京電力に入社した。1975年に双葉町に移り住み、福島第1原発で通信設備の保守管理などを担当した。町民として36年間過ごしてきたが、かつての職場が起こした原発事故で自らも避難を余儀なくされた。勿来酒井団地には2018年4月に入居した。

 入居者の多くは双葉町民だが、元々住んでいた場所はさまざま。住民同士が協力するため19年3月に自治会が設立され、国分は会長に就任した。高齢者が多く、独居者もいれば、認知症の人もいた。国分は「どのようにして入居者の暮らしを助けていくか、その思いをずっと持ち続けてきた」と語る。

 ただ、新たにつくられたコミュニティーを運営していくことには困難が伴った。入居者には双葉町以外からの避難者もいたため、自治体と自治会との間で個人情報の共有が十分ではなく、団地の部屋に誰が、何人住んでいるのか分からない場合もあった。

 亡くなった19人

 避難生活の長期化から、団地が完成してから入居者19人が亡くなった。中には「孤独死」もあった。119番通報で救急車が団地に駆け付けると、国分は会長としての責任感から搬送現場に立ち会った。団地内の戸建て住宅で住民が倒れ、管理人から「会長はマスターキーをお持ちですか」と問い合わせが来ることもあった。

 震災を経験した双葉町民だからこそ、いざというときの防災体制を強化したかった。いわき市の消防団と連携して地震や大雨を想定した防災訓練を実施したほか、20年2月に、団地に自主防災会を設立した。

 国分は特定復興再生拠点区域(復興拠点)の避難指示解除について「今までマイナスだったものがようやくゼロになる」と受け止めている。町内に整備される住宅団地への入居に合わせた来年10月ごろの帰還を予定している。新たな住宅団地でも、何らかの住民組織ができるはずだ。その時には、孤立を防ぐような取り組みなどに何か助言ができればと考えている。

 教訓伝える役割

 国分は「若い世代の町民や原発の視察者に、原子力災害の教訓を伝える役割も担いたい」と話す。震災と原発事故から11年余りに及ぶ全町避難。全ての事実と教訓を受け止め、双葉町の歴史の新たな一ページが開かれる。(文中敬称略)

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 双葉町の避難状況 双葉町は、2011年3月11日当時の人口から死亡者を除き、震災以降の転出者や転入者、出生者を含めた6674人を町の支援対象者としている(今年7月末現在)。県内に避難している人は3952人で、県外に避難している人は2722人。県内避難者はいわき市が2142人で最も多く、郡山市の628人、南相馬市の265人と続く。県外では、かつて役場機能を置いた埼玉県が756人で最も多い。