双葉、希望実感「当たり前の姿が戻ってほしい」 避難指示解除

 
自宅前でマリーゴールドなどが咲く庭の手入れをする谷津田さん=30日午前、双葉町

 被災自治体で唯一全町避難が続いていた双葉町で30日、特定復興再生拠点区域(復興拠点)の避難指示が解除された。東日本大震災と東京電力福島第1原発事故から11年5カ月余。ようやく新たなスタートラインに立った古里で、町民らは希望とともに節目の時を迎えた。

 「いつもと変わらない朝だが(避難指示という)引かれた線がなくなり、開放されたような気持ちだ」。1月に始まった準備宿泊で自宅に戻っていた元競輪選手の谷津田陽一さん(71)はこの日、いつもより1時間以上早い午前4時過ぎに目が覚めた。「気持ちが高ぶったと思う」と日の出を待ち、2匹の愛犬と共に散歩に出ると、すがすがしさに似た実感が込み上げた。

 避難指示解除に向け、避難生活で庭の整備などを進めてきた。イノシシに荒らされた自宅の修理にも追われ、落ち着いた生活は戻っていない。それでもマリーゴールドが見頃を迎えた庭で谷津田さんは「少しずつでも元の姿に戻すことはできる」と、周囲が花にあふれていた震災前を思い起こす。買い物や通院では浪江町や相馬市に通う。不便さは覚悟の上だが、十分に進まない住民帰還は気がかりだ。「赤ちゃんからお年寄りまで住んでいるのが本当の復興。居住希望者を募り、当たり前の姿が戻ってほしい」と期待する。

 30日の午前0時にJR双葉駅前で行われた避難指示解除を祝うイベントには、町内で不動産業を再開した大沼勇治さん(46)ら家族の姿があった。「今日から自由に住めるんだね」。顔を見上げながら尋ねる9歳の息子に大沼さんは「そうだよ」と笑顔で応じた。当面の生活拠点は町外に置くが、休暇には双葉を訪れ、震災後に生まれた息子たちとの思い出をつくりたいという。「街並みが変わっていく古里を子どもたちと目に焼き付けたい」

 一筋の光見えた

 避難先の埼玉県加須市から駆け付けた鵜沼久江さん(69)は、双葉駅前で行われた合同パトロール出発式を見届けた。避難指示解除に「帰還は諦めていたが、真っ暗なトンネルの中で一筋の光が見えたように感じた」。町を守ろうと巡回する人々の姿に勇気づけられた。

 町内は駅周辺にもまだ荒れ果てた建物が残る。鵜沼さんの自宅のある細谷地区は、中間貯蔵施設に近く帰還は見通せないという。二地域居住も検討するが「町内の別の場所に帰ってもそれは避難と変わらない。生きているうちに自宅に帰りたい」と願う。