開いた「双葉希望のとびら」 宇名根さん、叫んだ「ただいま」

 
「希望のとびら」を開け、「ただいま」と叫んだ宇名根さん。会場からは「お帰り」の声が上がった=30日午前0時、JR双葉駅前

 双葉町のJR双葉駅前で30日午前0時、町内の特定復興再生拠点区域(復興拠点)の避難指示解除を受け、「希望のとびら」を開いて町の新たなスタートを祝うイベントが行われた。町民有志を代表してドアを開けたのは2011(平成23)年3月、防災行政無線を通じて町民に津波や東京電力福島第1原発事故からの避難を呼びかけた宇名根(うなね)良平さん(46)だった。

 宇名根さんは当時、町住民生活課に勤務し、防災行政無線のアナウンサー役だった。11年3月11日の震災当日は、迫り来る津波から逃げてもらうよう町民に呼びかけた。原発事故が起きると政府の原子力緊急事態宣言や原発から半径2キロ圏内の避難なども伝えた。そして同12日朝、「大事な放送があります」とマイクを握った。「川俣町の避難所に向けて避難してください」

 それから、11年5カ月に及ぶ全町避難が始まった。時は流れ、昨年4月から宇名根さんは双葉町のまちづくり会社「一般社団法人ふたばプロジェクト」の事務局長に出向した。復興拠点の避難指示解除方針が決まると、同プロジェクトも含めた町民有志でイベントを企画することになった。

 他の市町村では、避難指示解除の日の午前0時、通行を制限していたゲートを開ける行事などが行われてきた。しかし双葉町の拠点はすでに通行規制が緩和され、それはできない。話し合う中、JR双葉駅前にドアを置き、一人が「ただいま」と言って開け、双葉ダルマのキャラクターが迎えるセレモニーが浮上した。

 日付が30日に変わる前、「希望のとびら」と名付けられたドアの前に立つ宇名根さんは、マイクを握らなかった。日付が変わった瞬間、地声で「ただいま」と叫んでドアを開けた。ダルマに近づく宇名根さんに、会場に集まった町民らから「お帰りなさい」と声がかけられ、大きな拍手が湧き起こった。

 大役を務めた宇名根さんは「お帰りなさいと迎えられた自分が、双葉を訪れる人を『ようこそ』と迎えたい」と笑顔を見せた。

 「希望のとびら」は、当面の間JR双葉駅に設置される。