【只見線再開通】本名駅/秘湯守り続ける 浴場で見る列車心待ち

 
「歴史ある湯倉温泉をもっと多くの人に知ってもらいたい」話す渡部さん

 金山町本名のJR只見線本名駅から車で5分ほどの場所に地元住民や県内外の温泉ファンから愛されている秘湯の湯倉温泉がある。只見線と同じく新潟・福島豪雨で被害を受け、2014年に生まれ変わった温泉だ。地元・本名区長の渡部喜市さん(76)は浴場から望む「列車の走る風景」が再び楽しめる日を心待ちにしている。

 湯倉温泉の共同浴場は本名地区が管理・運営する"地元密着型"のお湯。毎日鍵の開け閉めや週に2回の清掃なども住民が行っている。電気代や水道代、燃料代などで月に20万円ほどの運営費がかかるが、管理のための予算「温泉会計」をやりくりしながら代々守ってきた。

 11年前に起きた豪雨で建物が浸水、湯を地下からくみ上げるポンプなどが故障したため、温泉会計のほか、寄付金で新築した。自宅の風呂に入らず毎日利用する住民もいる。休憩室に置かれている「入浴感想ノート」は「最高のお湯でした」「絶対にまた来ます」など、利用した観光客の気持ちがこもった書き込みで埋め尽くされている。

 渡部さんは只見線の全線再開通が地元の観光に劇的な変化をもたらすとは考えていない。「復旧しても本名駅を利用する人は(豪雨災害前と)ほとんど変わりないんだろうけどね」。過去に通勤で只見線を使っていた渡部さん。当時は通勤、通学の乗客で車内は混み合い、座れずに立っている人もいた。高齢化や人口減少など時代の流れを考えると、かつての活気を取り戻すことは難しいことは分かっているという。

 ただ、期待がないわけではない。只見線で訪れた観光客にタクシーやレンタサイクルなどを利用してもらい、町内に点在する温泉巡りなどを楽しんでほしいと願っている。豪雨で被害を受けた共同浴場は生まれ変わり、大切に守られている。本名駅周辺でも、地元の思いがあれば人の乗り降りが少しは増えるのではないかと考える人たちもいる。

 「歴史ある湯倉温泉をもっと多くの人に知ってほしい。できれば駅も使ってもらえるといいね」。只見線の活路に思いを巡らせながら、これからも秘湯を守り続ける。

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 本名駅 只見川の本名ダムや御神楽岳登山道の最寄り駅。新潟・福島豪雨で流失した第6只見川橋梁(きょうりょう)はJR只見線の絶好の撮影スポットだった。車で5分ほどの場所に湯倉温泉があり、共同浴場に隣接する旅館鶴亀荘でも上質な湯を楽しめる。