【只見線再開通】会津越川駅/通過点で終わらない 旅の目玉を

 
開発したヒメマスの塩こうじ漬けや制作した木工品などを前に、再開通後の町の活性化策について思いを語る斎藤さん

 金山町越川(こすがわ)の民家や田畑に囲まれてひっそりとたたずむJR只見線会津越川駅。同地区に住む元町地域おこし協力隊の斎藤正靖(まさのぶ)さん(52)は、町の特産品を生かした新たな加工品の制作、販売などに取り組む。「再開通はゴールではない。改めて、只見線を使って町をどう売り込んでいくかを考えなければ」。全線復旧後の町の活性化策を思い描く。

 埼玉県出身の斎藤さんだが、父の実家がある越川地区は幼い頃から定期的に訪れている「第二の古里」。豊かな自然が広がり、家の近くを只見線が走り抜ける風景は当たり前の日常だった。周りの大人たちが町の未来をよりよくするために膝を突き合わせて話し合う姿も脳裏に焼き付いているという。

 そんな思い出もあり、「高齢化や人口減少に悩む町の力になりたい」と25年間勤めた医薬品メーカーの営業職を辞め、2018年に協力隊に就任した斎藤さん。地域に根差しながら、加工品の開発や伝統工芸の技術取得などに挑戦してきた。3年間の任期を経て会社を設立し、8月からは自ら開発した町特産ヒメマスの塩こうじ漬けの販売を始めた。今も父の実家に住みながら、伝統工芸品の木工品の制作や奥会津のカスミソウを使った加工品作りなどにも取り組む。

 斎藤さんがこうした商品開発や伝統継承に力を入れるのは「旅の通過点ではなく、目的地となるような仕組みをつくりたい」という思いからだ。只見線が復旧しても、すぐに町にプラスとなる影響が出るとは考えにくい。町の新たな目玉を生み出し、再開通を契機に観光誘客や交流人口の増加につなげたい考えだ。町内での宿泊者数を増やそうと、朝晩限定の只見線撮影会や伝統工芸の体験などの付加価値を付けたツアーづくりなども模索している。

 7月から始まった不通区間での試運転には、姿を一目見ようと駅まで駆け付けた。待ち焦がれた列車が目の前を通過したときには目頭が熱くなった。「止まっていた時間が動き出したようだった。再開通に向けて、町に来てくれた人が感動するようなおもてなしをしたい」。今も続けられる試運転でレールがきしむ音に懐かしさを感じながら、乗客を乗せた列車を歓迎する準備に全力を注ぐ。

          ◇

 会津越川駅 会津川口―只見間の開通後、国鉄に陳情を重ね、1965(昭和40)年に新設された請願駅。近くには、東北電力伊南川発電所や烏帽子山がある。