処理水トンネル掘削80メートル 第1原発着工1カ月、作業現場公開

 
(写真上)海水で薄められた処理水が通る海底トンネル。80メートルほどまで掘削作業が進んでいる(代表撮影)

 東京電力は6日、福島第1原発で増え続ける処理水の海洋放出方針を巡り、放出で使用する海底トンネルの掘削作業現場を初めて報道陣に公開した。県や原発が立地する大熊、双葉両町の了解を受けて始まった本格工事。着工から約1カ月が経過した現場を取材した。

 放出前の処理水をためるため5、6号機付近に掘られた「立て坑」。約40段ある急勾配の仮設階段で約16メートル下りると、海側に延びる直径約3メートルの灰色のトンネルが見えた。放出口となる沖合約1キロに向かう「一本の道」。部材などを運ぶためのレールが敷かれている。掘削作業が始まったのは県などの了解を得た2日後の8月4日。岩盤の状態などから1日に掘り進められるのは6メートルほどで、現在は約80メートルに達している。

 掘削はシールドマシンと呼ばれる大型機器を使って行われる。機器の先端にある「面板」を回転させ岩盤を削るたびに壁面材の「セグメント」を張り付ける作業を繰り返す。「多くの実績がある」と東電の担当者が強調するように、地下鉄工事などに採用されている技術と同じだ。

 トンネル掘削作業―。この言葉から、暗闇で多くの作業員が行き交う様子を想像していたが、蛍光灯で明るく照らされた現場にいるのは数人程度。モニターを見ながら掘削に必要な圧力や面板の回転数を調整する協力企業の担当者の姿は異彩を放っていた。

 東電は、処理水に含まれる放射性物質トリチウムの濃度が国の基準の40分の1未満となるよう薄めた上で、海面と立て坑の水位差を利用して海底トンネルから沖合約1キロで放出することを計画。今後の状況次第で工事が遅れ、来春をめどとする放出が来夏にずれ込む可能性があるとしている。

 放出が始まれば二度と立ち入ることができない場所に入り「ここを処理水が通るんですね」と口に出すと、「ご理解をいただければ」と東電の担当者は言葉少なに語った。作業が順調に進む一方で放出に向けた関係者の理解醸成が進んでいるとは言えず、もう一つの出口はいまだ見通せていない。(報道部・折笠善昭)