柳美里さん、バークレー日本賞を受賞 日本文化の理解醸成に貢献

 
5人目となるバークレー日本賞の受賞が決まった柳美里さん(宍戸清孝撮影)

 生涯を通じて日本への理解の醸成に貢献があった個人に贈られる第5回バークレー日本賞の受賞者に、福島県南相馬市小高区在住の作家柳美里さん(54)が決まった。同賞の受賞者は、作家村上春樹さん、映画監督宮崎駿さん、音楽家坂本龍一さん、物理学者でノーベル賞受賞者梶田隆章さんに次ぎ、柳さんで5人目となる。2020年の全米図書賞受賞に次ぐ快挙に、南相馬発の作家への注目度が一層高まりそうだ。

 「根底に希望」と評価

 バークレー日本賞の受賞決定については、柳さんの書籍を扱う河出書房新社が13日までに明らかにした。

 主催する米カリフォルニア大バークレー校日本研究センターは、柳さんの小説「8月の果て」や全米図書賞翻訳文学部門を受けた「JR上野駅公園口」に触れつつ「作品には厳しい現実や極限状況に置かれた人々の描写が多いにもかかわらず、その根底には希望があり、個人の自由を尊重する多様性、公平性、包括性のある社会の構築に向けて、日本から世界に力強いメッセージを発信し続けている」と授賞理由を挙げた。

 授賞式はカリフォルニア大バークレー校で現地時間30日(日本時間10月1日)に行われる。

 河出書房新社によると、柳さんは米シカゴ大と演劇に取り組んでいるほか、来年は代表作の一つ「8月の果て」の英訳版が出版される予定だ。また、イタリア語版「JR上野駅公園口」が、日伊財団主催の「第1回日伊ことばの架け橋賞」の最終候補にノミネートされており、今秋に結果が発表される見通しだという。

 柳さんは現在、「JR上野駅公園口」の対に当たる小説「JR常磐線夜ノ森駅」を文芸誌「文藝」、「ダイアモンド・ピジョン」を「文學界」で連載中。柳さんは、第31回みんゆう県民大賞のふるさと創生賞を受賞している。

 南相馬に移住 書店を開業、住民と交流

 柳さんは2011(平成23)年3月の東日本大震災後、臨時災害ラジオ局「南相馬ひばりエフエム」に出演。この縁から15年に神奈川県鎌倉市から南相馬市小高区に移り住んだ。18年にJR小高駅近くの自宅に書店「フルハウス」を開業して以来、地元住民との交流を重ねてきた。

 21年に第31回みんゆう県民大賞ふるさと創生賞を受けた際には、フルハウス開店について「『私ができるお店は本屋しかない』と思い付き、知識もないまま無計画に動き出した」と振り返り、困難に見舞われても「難しいから諦めようとは思わなかった。必要なことをやろうと思えば、必ず誰かが助けてくれる」と小高で生きる思いを語った。

 カフェも併設するフルハウスを通し、本と人、人と人をつなぐ柳さん。作家としてもまた物語を紡ぎ、小説と人との出合いを創出する。そして柳さんの作品は翻訳という形で海外に羽ばたき、これからも世界中の読者を魅了し続ける。

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 バークレー日本賞 世界屈指の名門大、米カリフォルニア大バークレー校の日本研究センターが2008年に創設した賞。数年に1度、受賞者が発表され、世界規模で日本文化の理解醸成に功績のあった個人に贈られる。受賞者には各分野を代表する人物が名を連ねている。