塙の強盗殺人、特定少年19歳に無期懲役 氏名公表、福島県内初判決

 

 福島県塙町で今年2月、菊池ハナ子さん=当時(75)=が殺害され、奪われたキャッシュカードで現金300万円が引き出された事件で、強盗殺人や窃盗などの罪に問われた孫で建築板金業の被告(19)=矢祭町=の裁判員裁判判決公判は15日、地裁郡山支部で開かれた。小野寺健太裁判長は「鉄パイプで頭を15、16回殴り、死亡させる危険性の高い行為と分かっていた」と殺意を認定し、求刑通り無期懲役の判決を言い渡した。

 4月施行の改正少年法により「特定少年」と位置づけられた18、19歳で、福島地検が起訴後に氏名を公表した被告に判決が言い渡されたのは県内で初めて。

 判決理由で小野寺裁判長は、被告が若く、父親が今後の支援を誓っていることを踏まえ「更生の余地はある」としつつも「強盗殺人罪自体が極めて重い罪で刑を減軽する事情は見いだせない」と結論づけた。

 最後に「裁判所としては更生できないと思っているわけではありません。服役の中で更生を深めることを期待しています」と被告に言葉をかけた。

 閉廷後、弁護側は控訴するかどうかについて「被告本人と確認の上、今後検討する」とした。

 判決によると、2月9日から10日未明に、現金を盗む目的で菊池さん方に侵入。菊池さんに見つかったことから鉄パイプで頭を15、16回殴って殺害し、キャッシュカードなどを奪ったほか、計18回にわたり茨城県などのATMで現金計300万円を引き出した。

 年齢より事件の悪質さ重視

 【解説】起訴後に氏名を公表された特定少年である19歳の被告が問われた強盗殺人罪の法定刑は20歳以上であれば死刑か、無期懲役に限られる。検察、弁護側の双方で主張が分かれた年齢の評価について、裁判所は「精神的未熟さがある」としながらも量刑を左右する事情とはいえないとして、20歳以上と同じ刑を科すのが相当と判断した。

 判決が重視したのは、被告の年齢より被害結果の重大性だった。小野寺裁判長は判決理由で、被告を「既に19歳」と表現し、20歳以上の被告への判決と同様に、事件の背景や被告の人間性について言及した。

 改正少年法は特定少年と位置付けた18、19歳にも少年の健全な育成を理念とする少年法の適用を維持しつつ、20歳以上と同様の刑事処分を科せるようにした。

 裁判員からは「更生できるかどうかを考えるのが難しかった」との意見もあり、更生の可能性と被害結果の重大性をどのように量刑に落とし込むのか、判断の難しさがうかがえた。

 改正少年法の付則には施行の5年後に社会や国民の意識の変化などを踏まえて制度の見直しを検討することが明記されている。少年の健全育成と厳罰化のバランスをどのように制度に反映させるか、社会全体で検証することが必要だ。(郡山総支社・阿部二千翔)

 「未成熟さ」考慮されず 生島浩福島大名誉教授(犯罪臨床学)の話

 検察による求刑通りの判決で、特定少年の殺意を認め、強盗殺人罪を認定した。事案の法的要件を優先した内容といえる。

 家庭裁判所の審理段階でたとえ原則的に逆送事件であっても、家裁調査官や少年鑑別所の心理技官が発達段階や社会的成熟度に関する専門的所見を示しているはずであり、本来はそれが反映された家裁や地裁の判決内容が求められる。

 しかし、今回の判決では「精神的に未成熟」と言及されているものの、それが判決内容に反映されていない。長期の服役だけでは「精神的に成熟」し「しっかりとした大人」になることは難しい。個々の特定少年の特性に応じ、精神的成熟を促す専門的なプログラムの整備が刑務所でも必要だ。

 刑を軽くする要素なし 諸沢英道元常磐大学長(被害者学)の話

 被告は金を盗もうと凶器を持って侵入した。「殺害するつもりはなかった」と言うが、裁判所は殴っているうちに出た殺意を認定した。罪名が殺人罪より重い強盗殺人罪になり、無期懲役の判決は妥当といえる。

 親族間の犯罪は親族の感情を重視する面がある。その点、被害者の長男が厳罰を求める意思を示し、被告の罪を許すことはなかった。さらに盗んだキャッシュカードで何回も現金を引き出し、遊びに使うなど全体的に心証が悪く、刑を軽くする要素が見えなかった。

 特定少年という特別な分類はできたが、凶悪事件に対しては法も厳格でなければならない。特定少年の権利と義務は表裏一体だ。厳しい判決だが、権利に見合う義務を示す形となった。