裁判長「更生を」、うなずく19歳被告 塙の強盗殺人、無期懲役判決

 

 福島県塙町で2月、菊池ハナ子さん=当時(75)=が殺害され、奪われたキャッシュカードにより現金300万円が引き出された事件の裁判員裁判。15日に地裁郡山支部で開かれた判決公判では、菊池さんの孫(19)=矢祭町=に無期懲役の判決が言い渡された。特定少年として県内で初めて起訴後に氏名が公表された被告。「裁判所は、あなたが更生できないと言っているのではありません」。小野寺健太裁判長が判決言い渡し後にそう諭すと、被告は言葉を発さず、小さくうなずいた。

 閉廷間際だった。裁判員や傍聴席の報道陣らが席を立とうとした時、小野寺裁判長が口を開いた。「服役の中で更生を深めることを期待しています」と語りかけると、被告は小野寺裁判長を見つめ、2、3回小さくうなずいて応じた。

 被告は、初公判から変わらず紺色のシャツにカーキ色のズボン姿で出廷。小野寺裁判長が主文や判決理由を読み上げている最中は目線を下に向けて反応を示さず、静かに聞き入っていた。顔はマスクに覆われており、表情がうかがえるのは目線やまばたきのみだった。

 これまでの公判では被告が中学卒業後に親元を離れ、事件当時は建築板金業の個人事業主として働きながら生計を立てていたと明かされた。小野寺裁判長は判決理由で、家庭環境の影響などから「自制心のなさなどの精神的未熟さがある」と言及。しかし「働く中で一定の社会常識を身に付けることはできた」と結論付け、金欲しさに祖母の命を奪った責任の重大さを受け止めるよう求めた。

 小野寺裁判長が最後の言葉を話し終え、約10分の判決公判が閉廷した。被告は再び目線を落とし、マスク越しに表情を変えることなく法廷を後にした。

 憤る遺族「謝罪ない」

 亡くなった菊池さんの50代長男は15日、判決公判後の福島民友新聞社の取材に「判決が出ても母が死んだことに変わりはない」と複雑な思いを吐露した。

 長男は判決公判を傍聴しなかったが、弁護士らからこれまでの裁判の様子を聞いていたという。事件から7カ月がたつ中、被告やその両親から謝罪がないとした上で「とんでもないことをしたという認識がないのではないか」と憤りをあらわにした。

 無期懲役の判決が出た被告に対し「金のことしか考えられない人間が出所しても周りに迷惑をかけるだけだと思う」と話した。

 裁判員「特定少年は難しい審理」

 判決公判後、裁判員の記者会見が開かれた。裁判員を務めた6人のうち40代男性1人が出席し、氏名が公表された特定少年の県内初めての裁判員裁判に臨んだ心境を語った。

 男性は、被告が19歳であることが審理に与えた影響を問われ「更生できるかどうかという点で難しかった。特定少年の公判は事例が少なく、責任を感じた」と明かした。特定少年の位置付けに関し「裁判所の説明から特定少年であることを理解した上で事件の残虐性などを評議した」と説明。「評議する中で答えが導かれていった」と振り返った。

 被告の更生の可能性について、男性は「裁判員が明言できることではない。彼が事件と向き合い、判決を受け止めて反省することが大事だと思う」と語った。