復興へ立地効果期待 浪江に国際研究機構、人でにぎわう地域に

 
機構の立地予定地を歩き「地域を挙げて歓迎したい」と語る鈴木さん=浪江町川添

 政府が「創造的復興」の司令塔として整備する福島国際研究教育機構の立地場所が16日、JR浪江駅西側の浪江町川添地区に決まった。「復興の原動力になる」と地元の期待は高く、新産業の集積を図る福島・国際研究産業都市(イノベーション・コースト)構想や県内の大学などの関係者も機構との共同プロジェクトに意欲を見せる。しかし、機構を核とした広域のまちづくりや、機構の設立効果を県内各地に広げる取り組みは、はっきりしない。機構の設立は来年4月。関係者は手探りで連携への道筋をたどりだした。

 「ここは昔からずっとのどかな農地だった。東日本大震災後、周辺は空き地や空き家が目立つ地域になってしまったが、再び人でにぎわう地域になるのかな」。誘致を進めてきた浪江町商工会の会長を務める鈴木仁根(ひとね)さん(68)は、くしくも機構が立地する川添地区の住民の一人。願うのは地元商工業の再生だ。

 東京電力福島第1原発事故で全町避難した町は一部地域の避難指示解除を受け現在、約1900人が暮らす。ただ、震災前の人口の1割にも満たず「この人口規模では商売が成り立たない」と帰還に踏み出せない会員事業者が多いのが現状だ。だからこそ、研究者やその家族らを呼び込める機構への期待は大きい。

 しかし、立地に向けた地元の課題は山積している。商業施設など買い物環境は十分ではなく、移住の受け皿となる住宅やアパートも足りない。

 鈴木さんは「地域を挙げて研究者の皆さんを歓迎したい。政府に早く機構の具体像を示してもらい、準備を進めたい」と求めている。

 福島大、福島医大も連携意欲

 機構の設立効果を研究、教育、産業振興の各分野で県内に波及させるには大学との連携が重要となる。特に福島市は国道114号で浪江町と結ばれており、行き来しやすいのが利点だ。

 プロジェクトへの参画計画を政府に提案した福島大の三浦浩喜学長は「参画の具体化が加速すると思われる。地元大学として幅広い分野で貢献していきたい」とコメント。福島医大の竹之下誠一理事長・学長は、機構が重点とする「放射線科学・創薬医療」「原子力災害に関するデータや知見の集積・発信」の各分野で参画できると意欲を示す。

 「地元の高等教育機関と緊密に連携を図ってほしい」。浜通りの高等教育機関や市町村、企業が一体となり復興創生を目指す「福島浜通りトライデック」(いわき市)専務理事の中村隆行さん(65)は、機構に集う研究者と地元の学生らとの交流が人材育成に好影響となることを望む。「地域の経済発展や人材育成を第一に考える研究者を集めてもらいたい」と訴えた。

 研究分野のうち、水素や太陽光などの再生可能エネルギー分野では、産業技術総合研究所福島再生可能エネルギー研究所(郡山市)との連携も鍵を握る。

 郡山市に商用定置式水素ステーションを設置し、水素事業を展開する佐藤燃料(同市)専務の土田研輔さん(54)は「水素の設備や供給のコストが現状では割高で、普及に向けた課題だ」と指摘。その上で「技術開発などを通じてコストを下げなければ補助金を除いたビジネスモデルの確立は難しい。連携して研究を進めてほしい」と注文する。

 一方、浜通りから距離がある会津では、連携を図ろうとする動きはまだ活発化していない。デジタル技術を生活に取り入れる「スマートシティ」を進める会津若松市は国のデジタル田園都市国家構想推進交付金の採択を受け、10月から先端技術を活用したサービスの導入を優先する構えだ。

 地元の関係者は「先端技術を地域活性化に生かすという目標は一緒だ」と強調しつつも「それぞれの取り組みが発展していけば、将来的に相乗効果が生まれるのではないか」と温度差があることをにじませた。