「知の交流拠点」へ一歩 双葉・伝承館開館2年、研究事業本格化

 
今春に常任研究員として着任した(左から)青砥さん、山田さん、葛西さん、静間さん(東日本大震災・原子力災害伝承館提供)

 東日本大震災・原子力災害伝承館が福島県双葉町に開館し、20日で丸2年を迎える。本年度から常任の若手研究員4人が着任し、より地域に根を張った研究活動を本格化させた。本県が直面する複合災害の経験を教訓として未来に残し、復興や防災につなげるため、「知の交流拠点」として新たな役割が期待されている。(浪江支局・渡辺晃平)

 ◆◇◇「復興と防災」へ

 「災害に関する"点"の研究が各地で進められている中で、伝承館が災害研究の俯瞰(ふかん)的な体系化を図り、教訓発信や人材育成につなげていきたい」。同館の佐藤伸司企画事業部長(46)は思いを語る。

 伝承館が担う主要事業は〈1〉資料の収集・保存〈2〉展示・プレゼンテーション〈3〉研修〈4〉調査・研究―の四つ。このうち、〈4〉調査・研究事業は教訓の体系化、教訓の発信、研究者の育成の三つを目的としている。原子力災害とその後の復興過程に関する研究を進め、そこから得られる教訓を抽出し、国内外の防災・減災につなげる考えだ。

 ◇◆◇教訓どう伝える

 昨年度までは高村昇館長(長崎大原爆後障害医療研究所教授)を筆頭に、医学や工学、情報学などを専門とする上級研究員3人の計4人が非常勤で在籍。そこに本年度から、常勤の研究員4人が新たにメンバーに加わり、研究体制は整った。

 着任したのは青砥和希さん(30)=矢祭町出身、葛西優香さん(36)=大阪府出身、静間健人さん(31)=大阪府出身、山田修司さん(34)=浪江町出身=の4人で、いずれも大学院で研究に取り組んできた30代の若手。「学校教育で震災の教訓をどう伝えるべきか」「震災は地域や住民にどう影響したのか」。4人は現在、浜通りに暮らしながら、こうした課題について調査と研究を進めている。伝承館は来春、常任研究員による初の活動報告会を開く予定だ。

 ◇◇◆認知度の底上げ

 伝承館には2年で、全国各地から延べ約13万人が来館した。来館者数は新型コロナウイルスの感染状況で浮き沈みはあったが、年間5万人の想定を上回る上々の滑り出しとなっている。

 開館2年目の今年は、展示内容の一部で英語、中国語、韓国語の音声ガイドを導入し、外国人向けの発信も強化した。佐藤部長は「来館者数は順調に推移しているが、これからが正念場だ。県外の来館者からは『こんな施設があるなんて知らなかった』という声を聞く」と現状を説明した上で、「伝承館の認知度の底上げは、福島の経験と記憶をさらに広げることにつながる」と展望を述べた。

 伝承館の周囲には震災遺構の請戸小(浪江町)などのほか、2025年度に県復興祈念公園(浪江町、双葉町)が完成予定で、一帯的な震災伝承エリアとなる。広域的な施設の連携により、伝承の輪を構築していきたい。