「ふたばちゃん」防災遺志継ぐ 双葉消防本部、殉職職員が考案

 
お披露目された「ふたばちゃん」。防災意識の向上に努めていく

 交通事故対応中に殉職した双葉地方消防本部の消防士松本康平さん=当時(37)=が考案した同本部の公認キャラクター「ふたばちゃん」の着ぐるみが完成し、22日に関係者にお披露目された。消防士としての使命と誇りを胸に、火災などのない社会を願っていた松本さん。職場で共に汗を流した同僚らは「康平さんの遺志を継ぎ、防火・防災意識の向上に貢献していきたい」と思いを新たにする。

 「自分のことより他人の気持ちを優先できる人。頼りがいがあった」。浪江消防署で松本さんと同じ部署だった安藤哲寛さん(36)は振り返る。ともに火災現場に駆け付け、消火活動を行ったこともあった。今も思い出に残っているのは、他人思いな松本さんの姿だ。

 松本さんの上司だった金沢文男さん(58)は「働きぶりは非常に丁寧。仕事を頼む前に終わらせていたこともあった」と話す。松本さんのことを信頼していた。

 松本さんは葛尾村出身。中学時代には双葉郡の駅伝大会で区間賞を取るなど、運動神経が抜群だった。大学卒業後は建設会社に2年間勤務するも、父の勧めもあって2007年に消防士になり、浪江消防署などで勤務した。

 公認キャラクターのふたばちゃんが誕生したのは、安藤さんのひらめきからだった。14年7月の本部通信指令センター開所に合わせて、本部職員を中心に案を募集していたところ、「康平さんならきっといい案が出るはず」と安藤さんが松本さんに持ちかけた。それを受け、松本さんは妖精をモチーフにしたキャラクターを考案。そのまま採用され、現在は一部の救急車やポンプ車などにペイントされている。

 しかし、松本さんは16年12月、帰宅途中だった広野町の常磐道で車4台が絡む事故現場に遭遇した。車を路肩に誘導するなどの作業に当たっていたところ、車にはねられ死亡した。

 事故から6年の今年、松本さんの遺志を継いで防災意識の向上につなげようと、消防本部が着ぐるみの製作を企画。双葉地方危険物安全協会、双葉地方消防設備協会、双葉地方防火管理者協議会の3団体が協力した。今後、各イベントなどで広報啓発活動を行う。

 「自分の力で火災が一件でもなくなればいいと思っていたと思う。着ぐるみができることで、康平の思いが形になった。啓発活動で活躍し、防火の意識が高まってほしい」。松本さんの父で葛尾村副村長の弘さん(63)は着ぐるみに思いを託していた。(三沢誠)