マイナカード普及、周知や手続き課題 福島県内交付率、全国下回る

 

 福島県内でマイナンバーカードの交付率が上がらない。総務省によると、県内の人口に対する交付枚数率は9月末現在、43.9%と全国(49.0%)を下回る。政府が矢継ぎ早に普及策を打ち出す中、県内自治体は交付率の向上に頭を悩ませる。ただ、周知不足や制度上の問題など課題も多い。

 交付率向上に向け、11月1日に「マイナンバー推進課」を新設する郡山市。政府が2024年に健康保険証を廃止し、マイナンバーカードに一本化する方針を示すと、担当部署には高齢者などから電話が急増した。「保険証が廃止された場合にどうすればいいか不安の表れだと思う」(担当者)。職員は対応に追われる。

 市の交付率は43.3%にとどまり、市内ショッピングセンターでの申請受け付けなど、手続きしやすい環境の整備に取り組んでいる。担当者は「申請や受け取りの方法が難しいと思い込んでいる人がいるので、その意識から一歩踏み出せるような働きかけをしたい」と話す。

 県内自治体で最も普及が進む昭和村は、制度開始から各集落の集会所に職員が出向いて説明するなど、地道に普及を進めてきた。交付率は68.3%に上り、村は「村国保診療所に保険証機能がついたマイナンバーカードの読み取り機を早い段階で整備したこともあり、健康保険証として利用する人も多い」という。

 政府は、来年度から交付率によって地方交付税の配分額や一部交付金に格差をつける方針で、低迷する自治体では交付率向上を急ぐ。磐梯町では、新規取得した町民に3千円分のポイントを贈る事業を展開するほか、白河市など県南の5市町村による大型店への合同申請窓口設置など、独自の取り組みも行われている。

 ただ、普及には制度上の問題もある。マイナンバーカードは、本人確認のため申請か受け取りの際に原則、住民票がある自治体の窓口を訪れなければならず、原発事故の避難者が多い自治体では普及の壁になっている。浪江町では16日時点で人口の約半数分の申請があったが、受け取りが完了していないものが約1800件ある。町によると、1千件ほどが遠くに避難していて「受け取りに行けない」という事情があるという。

 申請は全国のモバイルショップでも気軽にできる一方、受け取りは町役場か県内各出張所で行わなければならず、町には苦情の電話も相次ぐ。避難者向け特例で、避難先自治体への申請で郵送できる制度はあるが、周知面が課題。担当者は「問い合わせが多く、現場は混乱している。避難者にとって難しい制度で、国に改善を求めている」という。

 個人情報漏出に不安「紛失怖い」

 マイナンバーカードについては、個人情報漏出などの不安も多い。

 会津若松市の大塚邦子さん(78)は健康保険証との一体化を済ませており、月に1度は病院に通う。「(一体化で)医者に今までにかかった病気などを説明しなくていいので便利になる」と喜ぶが、「紛失したら悪用されるかも」と不安も口にする。福島市の会社員野地直人さん(29)もカードは取得したが、基本的には自宅で保管している。「紛失が怖くて持ち歩きたくない。個人情報が漏れてしまうのではないか」と話す。

 31日から電子処方箋のモデル事業が始まる須賀川地域。事業開始で、マイナンバーカードなどを持つ患者が紙から電子処方箋への切り替えを選択できるようになる。

 公立岩瀬病院の有賀直明医事課長は「マイナンバーカードを利用した制度は今後、医療でも主流になる。ただカードや関連制度の周知が進んでいない部分もある。事業を通じて課題や利点を探り、地域への周知も図りたい」としている。