シルバー人材、会員確保へ模索 ICT習得に活路、自主事業拡大も

 

 高齢者に働く機会を提供するシルバー人材センターで会員確保が課題になっている。高齢者の働く環境は近年急速に変わりつつあり、新型コロナウイルスの感染拡大も打撃を与えた。福島県内でもICT(情報通信技術)など時流に合う能力の習得や自主事業拡大を目指す動きが出てきており、各地で再興に向けた模索が続いている。

 ホールの一角で、スマートフォンを手にした会員が携帯電話ショップ店員の話に耳を傾けた。福島市シルバー人材センターが28日、同市で開いた会員向けの講習会。参加した会員らがスマホの基礎的な操作方法を学ぶ。同センターが本年度から始めた新規の取り組みだ。

 同センターは4月、高い専門性を目指す会員でつくる職能班に「ICT班」を新設し、9月に始動した。構成メンバーは63~78歳の会員17人。「表計算ソフト活用と業務改善」など実用的なスキルの習得を狙う。この日参加した男性は「力仕事は難しいが、ICTなら」と意欲を見せた。

 ICT領域の専門チームをセンターが設けるのは全国でも珍しい。千葉修常務理事は「シルバーには草刈りや庭木の手入れのイメージがあるが、民間企業に派遣し、働く姿を発信したい」と説明。「印象が変われば新たな会員の獲得にもつながる」と期待する。

 2012~21年度の9年間で、本県に43あるセンターの登録会員数は1040人(8%)、受注件数は4731件(7%)減少した。福島市は同期間で会員数は16%、受注件数は33%も減り、危機感は強い。

 苦境の背景には厚生年金の支給開始年齢が段階的に引き上げられ、企業の定年延長や再雇用制度が拡大したことがある。さらにコロナ禍で多くの高齢者が就労を諦めた。仕事の依頼に対応できないケースも出始め、人員確保は喫緊の課題だ。

 外部からの発注に寄らない独自企画でセンターの魅力を高める動きもある。三春町シルバー人材センターは竹細工や木工品を会員約30人が製作、販売する自主事業に力を入れる。収入は限定的だが、就労のミスマッチ解消に一役買っているという。

 「仮に希望する仕事がなかったとしても、別の選択肢として手工芸を紹介できる」と担当者。11月には非会員の町民向け就業体験会を開催し、やりがいや雰囲気を知ってもらう考えだ。

 高齢者の就労について詳しい城西大の塚本成美教授(経営社会学)は、安定的な会員の確保には「ホワイトカラー出身者や女性、75歳以上の後期高齢者の会員拡大が重要になる」と指摘する。「企業との競争に勝つには就労の選択肢を増やすことが不可欠。他方で除草など従来の仕事も大切で、両立させる策を考えていかねばならない」としている。

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 シルバー人材センター 1986年の高年齢者雇用安定法改正に伴い法制化された。地域の高齢者に就業機会を提供し、生きがいの充実や社会参加の促進を図る。原則60歳以上が会員登録する。草刈りや清掃など臨時・短期の仕事が多く、報酬は月平均4万円弱。3月末現在、県内の会員数は1万2026人。全国で2024年度までに100万人を目指すが、09年度の79万人をピークに減少している。