只見線、盛況過ぎて 再開通1カ月...「座れない」いす持参の客も

 
全線再開通から1カ月がたっても盛況が続くJR只見線。混雑解消のため地元や利用者からは車両の増設を求める声が上がる=只見町・JR只見駅

 1日で全線再開通から1カ月となるJR只見線は、紅葉の時期や政府の観光振興策の全国旅行支援も重なり、盛況が続く。しかし、車内が乗客で混雑して座れない事態も招いており、JR東日本は冬までに車両の増設を含めて検討を急いでいる。沿線では予想以上の滑り出しを歓迎する一方、受け入れ態勢を工夫しようとする動きが出ている。

 JR東、車両増検討

 「みんなで折り畳みのいすを用意して乗ってきたよ」。JR只見線愛好会の目黒長一郎さん(73)=只見町=は10月27日、再開通後初めて会員と一緒に只見線で小旅行をした。車内では座れず、持参した折り畳みのいすが役立った。目黒さんは「『通勤時の山手線のようで景色を見る余裕がない』と嘆く乗客がいた。一時だけでも車両を増やさないと(利用客が)リピーターになってくれない」と率直な感想を口にした。

 JR東は既に1両編成の列車を2両に増やして運行しているが、平日や休日を問わず、多くの乗客が座れない状況が相次ぐ。「全線再開後、想定以上に乗客が増えている」と担当者。JR東は3両編成の導入や2両編成の車両を増やすなどの対策を検討している。

 会津若松市のJR会津若松駅舎内にある県只見線管理事務所によると、平日の日中も混雑し、土、日曜日、祝日は運行の1時間以上前から列車を待つ乗客もいるため、イベントで販売する特別列車を紹介している。

 「3時間立ったまま」

 ただ、沿線市町村などには乗客から「(会津若松駅から只見駅まで)3時間も立ったままだった」と不満の声も寄せられているといい、混雑対策は急務だ。

 只見線を撮り続ける奥会津郷土写真家の星賢孝さん(73)=金山町=は11年ぶりに果たした全線再開通の波及効果に確かな手応えを感じつつ「想像以上に人が来ているが、いろいろな対応が追い付かず、おもてなしがうまくいっていない」とこの1カ月を振り返った。

 星さんらの思いを伝えるドキュメンタリー映画「霧幻(むげん)鉄道―只見線を300日撮る男」が全国各地で上映され、来年は海外での公開も検討されている。星さんは「写真や映画の力は大きい。インバウンド(訪日客)は冬の方が多い。沿線の景観整備などを含め、民間と行政が一緒になって取り組みたい」と力を込めた。

 「客足続く仕組みを」

 JR只見線の全線再開通は、沿線の宿泊施設や飲食店、観光スポットにもにぎわいをもたらしている。

 只見町では宿泊施設や飲食店の予約が取れないほどの活況ぶりだ。町インフォメーションセンターによると、災害復旧工事の作業員の利用もあり、今月まで町内19軒の旅館と民宿はほぼ満室だという。町旅館業組合長の菅家和人さん(64)=旅館ますや=は「うれしい悲鳴だが、お断りするのは心苦しい。冬季は雪で閑散期となり、調整できるようになれば」と話す。

 センターが運営するJR只見駅前のにぎわい拠点施設「只見線広場」の利用者数も想定を上回り、平日は100人ほどで、休日は200人を超えるという。町地域創生課の角田祐介さん(42)は「列車の本数が限られ、町内滞在時間は長い。沿線市町村やJR東と調整し、にぎわいを継続させる仕組みを整えなくてはいけない」と課題を挙げた。

 「霧幻峡の渡し」人気

 金山、三島両町を流れる只見川で運航される観光用渡し舟「霧幻峡(むげんきょう)の渡し」は今月中旬ごろまで、予約でいっぱいの状態が続く。

 例年では今月下旬にも冬季休業に入るが、運営する金山町観光物産協会は「会津を初めて訪れる客からの問い合わせがある。列車を利用して訪れる客も多い」と歓迎する。10月29日に乗船した宮城県柴田町の大石養一さん(75)は「初めてだったが、船頭さんの話を聞きながら絶景を楽しめた。次は只見線に乗ってみたい」と声を弾ませた。

 同協会が手がける只見線オリジナルグッズは、マフラータオルが最初の500本を完売したため、さらに500本を近く納品する予定だ。事務局長の小沼優さん(31)は「紅葉シーズンが終わっても、金山で楽しんでもらえる仕組みを考えたい」と戦略を練る。