ママ漁師、海で奮闘 相双漁協、女性組合員5倍近くに増加

 
夫の正蔵さん(右)と漁に励む加奈子さん=南相馬市鹿島区・真野川漁港

 東日本大震災後、福島県の相双地区で女性漁業者が増えている。男性の仕事とされた漁業だが、漁船の機械化が進んだことなども後押しとなり、相馬双葉漁協の女性組合員は震災前と比べて5倍近くの28人に増加した。担い手の確保が課題となる中、漁業に飛び込んできた女性たちに、関係者は期待を寄せている。

 南相馬市鹿島区の真野川漁港で、平加奈子さん(41)は唯一の女性漁師だ。夫の正蔵さん(42)が船頭を務める「平安丸」で漁に出ている。「港で船の帰りを待つよりも、一緒にやる方がいい」と笑顔が絶えない。今はシラス漁の時期で、3人の子育てをしながら忙しい日々を送る。

 加奈子さんは広島県福山市出身。香川県の旅館で仲居として働いていた時、組合の旅行で来ていた正蔵さんと出会い、遠距離恋愛を経て2008年に結婚した。「漁師の妻にはなったが、まさか自分が漁師になるとは思ってもなかった」。そう笑う加奈子さん。転機となったのは16年の春、正蔵さんと一緒に漁に出ていた義父仁一さん(67)のけがだった。

 港に戻った時、水揚げを手伝う「サポート役」に徹していたが、義父に無理をさせないためにも、船に乗り漁に出ることを決意した。「旦那が倒れた時のために」と14年に船舶免許1級を取得し、準備していたことが役立った。

 漁師生活が始まると、船上では船酔いや強い日差しに圧倒された。最初は疲れ果て食事も喉を通らなかった。それでも、夫と二人で仕事ができることに充実感を覚えたという。

 また、魚種が豊富で1年通して漁ができる本県沖にひかれていった。「多種多様な魚がいるし、やればやるだけ収入になるのが漁業の魅力」と語る。

 海に出るようになって6年余り。夫の正蔵さんは「妻がいないと漁にならない。なくてはならない存在だ」と話す。加奈子さんは「家族がいなかったら両立はできない。義母が手伝ってくれるからできる」と感謝しながら漁に出ている。(丹治隆宏、坪倉淳子)

 機械化が就業後押し

 漁協関係者は女性漁業者の活躍に期待している。相馬双葉漁協の今野智光組合長(64)は「性別に関わりなく、漁業で頑張ろうとする人をサポートしていきたい」と話す。

 女性漁業者が増えた背景には、作業環境の変化がある。今野組合長は「昔と違って、漁師は男だけの仕事でもなくなった。作業の機械化が進んだことで、女性の就業を後押ししている」と説明する。

 同漁協は来年1月から国の助成制度を活用し、小型新造船の導入を進める予定。さらに作業環境は向上し、新規就業者などを受け入れやすくなる見通しだ。

 同漁協の組合員は震災前1119人で、女性は6人のみだった。震災で組合員101人が犠牲になったこともあり、組合員数(今年3月末時点)は846人に減少したが、女性組合員は28人に増加した。