原発事故の賠償対象拡大 文科省原賠審、中間指針見直しへ

 

 文部科学省の原子力損害賠償紛争審査会(原賠審)は10日、東京電力福島第1原発事故を受けた国の賠償基準となる「中間指針」を見直し、新たな損害項目を取り入れて対象を拡大する方針で一致した。原発事故初期の過酷な避難状況を考慮することや、ふるさとの変容に伴う精神的損害を加えることなどを検討する方針で、具体的な基準や金額を設定するための議論に着手する。

 原賠審は、原発事故で避難した住民らが国と東電に損害賠償を求めた集団訴訟で、中間指針を上回る東電の賠償責任が相次いで確定したことから、指針見直しの要否を検討してきた。

 10日の会合では、原賠審の専門委員が確定した判決の調査・分析の最終報告をした。報告で「現在の中間指針の構造を維持しつつ、新たに類型化された損害を取り込む努力・工夫が求められる」とされたことを踏まえ、原賠審は従来の一貫性や継続性を重視した上で「追補」形式での見直しを進める方針。追補は2013年12月の4回目を最後に行われていない。

 原賠審が議論する論点は【】の通り。避難指示区域に指定された地域については▽過酷避難状況による精神的損害▽故郷喪失・変容による精神的損害▽相当量の線量地域に一定期間滞在したことによる健康不安に基礎を置く精神的損害▽精神的損害の増額事由―の四つの論点で賠償基準や額を検討する。

 放射線への不安と着の身着のままによる過酷避難での損害は、慰謝料を算定する上で独立した損害項目とするのではなく、加算要素とするかどうかを検討する。ふるさとの喪失・変容を巡っては、変容による慰謝料が対象となっていなかったため、新たに追加できるか議論する。変容の具体的な内容については個別事情を考慮する。自主避難による精神的損害では、賠償の対象となる時期の変更が必要かどうかを検討する。子ども・妊婦に対する賠償基準については各判決と整合が取れているとの考えで、今後の見直しについては慎重に判断するとみられる。

 原賠審の内田貴会長は終了後、見直し時期について「確定判決から8カ月ぐらい経過している。できるだけ早い時期に方針を出していきたい」と述べた。

 東電は「原賠審の議論を踏まえ、国の指導もいただきつつ、真摯(しんし)に対応していく」とコメントした。