車頼み高齢者の足 運転免許の返納...「生活の不便」解消が鍵

 
違反歴がある75歳以上が受ける運転技能検査の課題の一つ「段差乗り上げ」。前輪が段差に乗り上げてから停止するまでに1メートルを超えると減点となる

 高齢者の運転による悲惨な事故が後を絶たない。福島市では男(97)が運転する軽乗用車が歩道にいた女性をはねるなどし、1人が死亡、男を含む5人がけがをする事故が起きた。県内でも高齢者が運転免許を自主返納する動きは進んでいるが、車がないと生活が不便な地域も少なくなく、高齢者の足の確保と安全対策の両立をどう進めていくか、議論が求められている。

 「事故を起こしたらと思うと怖い」。福島市の事故現場近くに住む女性(81)は21日、免許を自主返納した。半年近く車を運転していなかったという。40年以上無事故無違反の夫(82)は現状で返納するつもりはないが、2年後の更新時期が近づいたら考えが変わるかもしれないと思う。「安全運転を心がけているが、絶対はない。足腰が悪くなるなど自分の健康に考慮して判断したい」と話す。

 県警の10月末までのまとめによると、運転免許証を持つ県内の75歳以上の高齢者は11万7983人。免許を返納した高齢者は3678人(前年同期比55件増)で、免許を所持する高齢者に占める割合は3%だ。

 今回の事故現場は近くに大型商業施設があるが、鉄道やバスなどの公共交通は少なく、買い物のために車を利用する人が目立つ。近所の男性は「この辺りはバスも1~2時間に1本。車がないと生活ができない」という。別の男性は「免許を返納した後にどうやって生活していけばいいのか分からない」と悩む。

 高齢者の事故について、宮城県警で多くの交通事故に関わった日本交通事故調査機構(仙台市)の佐々木尋貴代表(58)は「車の運転は認知、判断、操作の繰り返しだが、高齢になればなるほど、その能力が衰えていく」と指摘。判断や操作の遅れが大きな結果を招くため「若い時に比べれば確実に体力や認知能力などは衰える。『自分は大丈夫』ではなく、衰えを自覚することが重要で、速度を出さないなどの運転を心がけてほしい」と促している。

 認知、運転技能検査を実演 県警

 今回の交通死亡事故を受け、県警は22日、75歳以上が運転免許を更新する際に受検が義務付けられている認知機能検査と、運転技能検査を報道陣に実演した。

 運転技能検査は5月施行の改正道路交通法で、過去3年間に信号無視など一定の違反歴がある高齢者について受検が義務化された。検査は「一時停止」「段差乗り上げ」など5項目で採点され、合格しなければ次の認知機能検査に進むことができない。

 免許更新時に運転技能を確かめる実車の試験に取り組むことで、高齢運転者が原因となる交通事故を防ぐのが狙い。県内で運転技能検査を受けたのは10月末現在で450人おり、このうち422人が合格した。

 県警は、高齢ドライバーの電話相談に応じる専用ダイヤル「♯8080」を開設している。