JA福島五連・管野啓二会長に聞く 「価格高騰、迅速に支援」

 
肥料の価格高騰などについて「国や県の支援策を迅速に活用できるよう後押ししていく」と語る管野会長

 本県農業を取り巻く環境は、東京電力福島第1原発事故の避難指示解除地域での営農再開や新規就農者の増加など明るい兆しが見られる一方、肥料や飼料、生産資材の価格高騰や根強く残る風評、今春に迫る原発処理水の海洋放出計画など、課題が山積している。2023年の年頭に当たり、JA福島五連の管野啓二会長に所信を聞いた。(聞き手・編集局長 小野広司)

 ―肥料や飼料、生産資材の価格高騰による県内への影響は。農業者を守るためどう対応していくか。
 「東日本台風以降4年連続で自然災害が発生し、営農意欲の減退や離農の加速化が懸念される中、被災農家への財政支援や収入保険の加入促進に尽くしてきた。肥料や飼料、生産資材の価格高騰は本県の農業基盤自体に影響を及ぼしかねない喫緊の課題。肥料価格高騰対策事業をはじめ畜産・酪農対策など国や県の支援策を迅速に活用できるよう後押ししていく。主食用米から飼料用米への転換に加え、国内需要のある麦や大豆など畑作物への転換も積極的に推進していく」

 ―ALPS処理水の海洋放出計画が今春に迫る。政府や東電が示している風評対策や賠償方針に対する評価は。また、県産農畜産物の風評の現状と海洋放出の影響をどう考えているか。
 「海洋放出によって風評が発生するのかどうかは計り知れない。万が一発生した場合の賠償方針については、現在の方針踏襲を基本に、あらかじめ賠償期間や地域、業種を限定せず損害の実態を確認した上で賠償するとしており、賠償の枠組みの方向性として違和感はない。原発事故発生から11年余が過ぎても生産者が帰還して営農を再開できない避難指示区域が一部に残り、いまだ県産農畜産物には風評による価格差が発生し続けている。海洋放出の影響に限らずこれ以上の風評が拡大することはあってはならない」

 ―ふくしま園芸ギガ団地構想の進捗(しんちょく)と展望は。
 「ふくしま未来はキュウリ、福島さくらは4地区でキュウリやトマト、浜風ほうれん草、長ネギ、イチゴ、夢みなみはキュウリ、東西しらかわはイチゴ、会津よつばはアスパラガスやカスミソウなど各JAでそれぞれの地域性や歴史、将来性を見据えて生産拡大を進めていく。団地化が実現した地区をモデルとして県内各地への進展を図っていく。主食用米生産への過度な依存から脱却し、園芸を中心に需要の変化に応じた生産販売対策を進めることで『もうかる農業』を実現し、本県農業産出額を震災前の2330億円とする目標を早期に達成したい」

 ―担い手の確保・育成にどう取り組むか。
 「県内の2022年度の新規就農者は334人と、現行調査開始以降初めて300人を超えた。新規学卒者やUターン、Iターンなどさまざまな人たちの多様な形態での就農を後押ししていきたい。県やJAグループ、農業団体が一体となり、就農希望者への相談対応や就農後に経営が軌道に乗るための支援を行う『アグリサポートセンター(仮称)』構想についても早期実現に向け県と協議を進めたい」

 ―デビュー3年目となる「福、笑い」など県産米の販売戦略は。
 「本県の農業産出額の約4割をコメが占め、今後も本県農業の揺るぎない柱だと思っている。コロナ禍でコメの消費が減少し2021年産の米価は大きく下落した。2年続けての大規模な主食用米の生産削減で、22年産は若干引き上げられたが20年産には及ばない水準だ。各銘柄の需要を的確に捉えた品種構成や生産、販売の戦略を検討する。『福、笑い』は首都圏などでのトップセールス時の反応が良く、ふくよかさや甘みなど食味の評価も高い。限られたブランド米市場で各産地がしのぎを削る中、県産米のトップブランドとして高価格を維持しながらいかに市場での売り場を拡大していくかが鍵だ。今年は生産規模が約1.5倍に拡大されるが、高品質を保ち続けていくことも重要だ」

 ―県産農産物の海外戦略についてはどう考えるか。
 「県産農産物の21年度の輸出量は431.6トンと前年度の1.5倍に増え、統計がある05年度以降で最多となった。コロナ禍の影響でモモやナシの輸出量は減ったが、香港やシンガポールで、『巣ごもり需要』によるコメの輸出量が震災前の約3倍に増えた。輸入規制を実施する国・地域はピーク時の55から12に減ったが、今後も国や県に働きかけ一日も早く全ての規制が解除されるよう取り組みを進めていきたい」

 ―GAP(農業生産工程管理)推進の現状と戦略は。
 「GAPの取り組みはSDGs(持続可能な開発目標)との親和性が高く、SDGsの広がりとともに、今後GAP農産物のニーズが高まることは必然と考えている。本県の認証件数は昨年7月時点で389件(うちJAグループ90件)、認証農場数は709経営体。ASIAGAP、JGAPの認証農場数は県内で栽培のないお茶を除き日本一だ。一方で大きな目標の一つだった東京五輪・パラリンピック終了後、GAPの取り組みの機運が低下していることも事実。県と連携しながら経営効果の見える化や企業との連携強化など引き続きGAPの拡大に取り組んでいく」

 ―「新たな組織体制」の検討をどう進めていくか。
 「JA福島大会で決議した3カ年計画(22~24年)で進めていくこととしており、協議に着手したばかりの段階。引き続き研究、検討を続けていく」