アバターだから気軽に相談 仮想空間でひきこもりの孤立解消へ

 
(写真上)仮想空間に設けられたオンライン居場所の画面(写真下)アバターを操作し、相談を受ける木幡さん(右)と市川さん

 ひきこもり状態からの自立を支援しようと、白河市で「メタバース」の技術を使った取り組みが進んでいる。メタバースは、インターネット上の仮想空間に分身(アバター)を使って入り、他者と交流したり、イベントを楽しんだりできる技術。事業を展開する市ひきこもり相談支援センターTUNAG(つなぐ)は「顔を合わせるのが難しい人でも、メタバースの会話ならば孤立感を解消できるかもしれない」と期待を寄せている。

 会話する場所は、インターネット上の仮想空間に設けられた風情を感じる和室。畳やいろり、ふすまがあり、障子の隙間からは池のある日本庭園が見える。この仮想空間の呼び名は「オンライン居場所」だ。

 和室の中には、人やネコの姿をしたアバターが立っており「こんにちは、お話に混ざりませんか」などとチャットで話しかけてくれる。アバターを操作しているのは、相談支援員の市川寛子さん(44)と木幡東海(あずみ)さん(39)だ。

 市川さんは「今は好きな食べ物など、簡単なテーマで会話をしている。相談したいという要望があれば、秘匿性のある部屋で相談に乗ることもできる」と話す。

 取り組みは昨年11月から、市の委託を受けて試験的に始まった。オンライン居場所の大きな目的は、ひきこもりの人が気軽に相談できる場所にすることだ。事業を委託した市の担当者は「オンライン居場所がきっかけとなり、実際の自立支援につなげることができれば」と期待する。

 同センターのホームページ内にあるアドレスから、スマートフォンなどで簡単に入室できる。昨年11月は週に2日ほどオンライン居場所を開催。延べ10人以上の来場者が仮想空間を訪れたという。

 現在はさらに気軽に利用できる場所にしようと試行錯誤が続いている。公開部屋から秘匿性のある非公開部屋への誘導方法など、オンラインでもより安全・安心な居場所づくりを模索中だ。

 市川さんは「職員の雰囲気を少しずつ伝えながら、困っている人が相談しやすい環境を考えて新しい方法をこれからも模索していきたい」と力を込める。

 ひきこもり、県内は1327人

 県が昨年6、7月、民生委員を通じて行った調査によると、ひきこもり状態やその疑いがある人は県内に1327人おり、40~50代が半数を占めた。このほか、高齢の親と中高年のひきこもり状態の子が同居する「8050問題」を抱える世帯は298世帯だった。

          ◇

 白河市ひきこもり相談支援センターTUNAG(つなぐ) 社会福祉法人優樹福祉会が市の委託を受け、運営している相談窓口。ひきこもり状態にある人やその家族から相談を受け、適切な支援機関に結び付けるなど、ひきこもり自立支援事業を行っている。