手話通訳者、必要な仕事 福島出身・保科さん、活動の場広げる

 
手話通訳者として活躍する保科さん(右)。テレビドラマで手話に注目が集まる中、「手話が身近な言語として広まってほしい」と期待を寄せる

 ろう者が主役のテレビドラマ「silent(サイレント)」(フジテレビ系)が今冬、話題を呼んだ。手話通訳者として出演者への手話指導を支えたのは、福島市出身の保科隼希(としき)さん(24)だ。手話通訳者は手話を読み取って言葉に換え、手話や口の動きを駆使してその逆も行う。ろう者や難聴者と健聴者をつなぐ仕事で、必要性が高まっている。保科さんは「手話は言語。もっと身近な言葉として、手話で話せる人が増えてほしい」と願いながら活動の場を広げている。

 保科さんの仕事は、東京パラリンピックなどのスポーツ関連の事業をはじめ、講演会やイベントの通訳など多岐にわたる。県内で活動することもある。テレビドラマ「silent」では、ろう者の手話指導者と出演者の間に立ち、出演者に手話の細かい動きなどを伝える役目を担った。

 手話通訳者を志したのは大学時代。福島成蹊高から亜細亜大に進学し、1年生の時に受けた手話の授業で、のめり込んだ。幼少期から、耳が聞こえない祖父母と手話であいさつなどの簡単な会話をしていたこともあり、抵抗感は全くなかった。

 学生同士で手話をすることが楽しくなり、2年生になると有料講座を受講。「初対面の人と話すとき、どうしても緊張してしまう。でも手話だと自然と相手の目を見て、心を開いて話すことができるように感じた」。ろう者の社会進出が活発となり、若い手話通訳者が不足していることを知って仕事にすることを決めた。大学を卒業して1年間はアルバイトで生計を立てながら手話通訳の経験を積み、昨年から本格的に独り立ちした。

 現在、活動の原動力となっているのが、手話や手話通訳に対するイメージを変えたいとの思いだ。「ボランティア・支援」と見られがちで「偉いね」「優しいね」と言葉をかけられることがあるという。

 「英語を通訳する人に同じことを言わないはず。手話は『福祉』ではなく『言語』なのに」と保科さん。手話通訳者がろう者にとっての「助け」や「支援」との認識はなく「手話通訳者が支援ではなく、仕事としても認めてもらえる社会になってほしい」と語る。

 さらにイメージを変えるきっかけとして保科さんが期待するのが、ろう者のスポーツ大会「デフリンピック」。2025年11月に東京都を中心に国内で初めて夏季大会が開催される予定で、本県でもサッカー競技がJヴィレッジで行われる。デフアスリートとの仕事も多い保科さんは「大会の成功に貢献したい」と意欲を燃やしており、「手話が広まり、手話通訳という仕事もより価値が高まるきっかけになればうれしい」と青写真を描く。