ハウスでワサビ超促成栽培 相馬のアグリ・コア開発、省力化も実現

 
ハウス内でワサビの生育状況を確認する池見農場長=相馬市

 農産物の栽培技術のライセンス提供や農業用資材の製造、販売などを手がけるアグリ・コア(福島県相馬市)は、豊富な清流や涼しい気候が生育に必要なワサビを、ハウスで超促成栽培する技術を開発した。温暖化などでワサビの生産量が減少する中、栽培技術のライセンス展開にも乗り出しており、今年から全国8カ所で同社の技術を生かした生産が段階的に始まる。

 相馬市にあるハウス(栽培面積3300平方メートル)には、高設ベンチが整然と並び、定植されたワサビが深緑色の葉を伸ばす。1万株を栽培しているが、従業員は収穫作業などに携わるパートタイムの3人を含め5人。ハウス内の温度や湿度などの情報をセンサーで収集し、栽培環境を制御する自社開発のシステムを導入することで省力化を実現した。

 収穫されたワサビは「相馬わさび」のブランド名で販売されている。漬物などとして味わえる葉ワサビと、すりつぶして「おろしわさび」にする根茎ワサビ(本ワサビ)を、市内の直売所や県内のホテル、飲食店などに出荷する。池見弘嗣農場長(49)は「香りや辛みは、沢などで露地栽培されるワサビに引けを取らない」と胸を張る。

 同社によると、ワサビの生産量は、温暖化や自然災害などの影響により過去10年で30%以上減少している。県内では伊達市の霊山地区や月舘地区で育てられていたが、原発事故以降、栽培面積は激減。こうした状況に着目し、同社は2018年に栽培技術の開発に着手。19年度から県や福島イノベーション・コースト構想推進機構の支援を受けた。

 研究開発では、微生物を活用した特殊な培養土を使用することで、冷涼な環境を好むワサビの耐暑性が高まり、気温30度でも栽培できることが分かった。栽培期間の短縮化にも成功し、定植から収穫まで2年6カ月~3年が必要な葉ワサビを、植え付けから2.5カ月で摘み取りができるようにした。さらに成長に豊富な清流が欠かせない根茎部分が、培養土でも約1年6カ月で10センチ程度に育ち、出荷できることも確認した。

 ライセンスの提供先が、静岡、岐阜、広島、愛媛など8県にまたがることから、同社はクラウドシステムを活用した栽培管理の遠隔指導も検討している。池見農場長は「場所を選ばずに栽培でき、天候の影響も受けにくいため、年間を通じて安定して生産できる。本ワサビをより身近なものにしていきたい」と話している。