農家の思い捨てない 伊達のレストラン、不ぞろい食材を格安料理に

 
(写真上)地元生産者との交流を大切にしながら食品ロス削減と地産地消に取り組む末永さん(左)(写真下)地元食材をふんだんに使った「リナートボックス」

 まだ食べられるのに廃棄されてしまう「食品(フード)ロス」の削減と地産地消を一緒に進めようと、福島県伊達市保原町のイタリアンレストラン「トラットリア・ラ・ワサビ」の取り組みが注目を集めている。不ぞろいで市場に並ばない食材を買い取ったり、仕込みで使い切れなかったりした食材を調理し、通常より安価で販売。活動は不定期だが、生産者との連携を強めて地場産農産物のおいしさと魅力を伝えると同時に、食品ロスをなくそうと試行錯誤を続けている。

 独自の取り組みの名称は「リナート」。「リナート(RINATO)はイタリア語で『再生』『生まれ変わり』を意味する言葉。地元農家とお客さんを料理でつなぎ、おいしさの笑顔の輪を広げていきたい」。オーナーシェフの末永俊一朗さん(51)は取り組みに込めた思いを明かす。9日に今年最初のリナートを企画し、ピザなどを売り出した。

 長年、飲食業に携わってきた末永さんは、飲食店の食品ロス問題に心を痛めてきた。市内には果樹や野菜を生産する農家が多く、交流サイト(SNS)などで気軽に生産者や客とつながることにより、食品ロスの解消に結び付けられるのではないかと思い付いた。

 末永さんは昨年10月から活動を始めた。地元農家とお薦めの旬の食材や生育状況、収穫時期などについて情報を交換。相談を受けると、不ぞろいの食材を買い取り、パスタソースやポタージュスープなどに生まれ変わらせ、メニューに反映させている。「不ぞろいの野菜は通常であれば出荷できず、土に返してしまう。おいしく食べてもらえることは生産者冥利(みょうり)に尽きる」と店に野菜を届ける農家から喜ばれている。

 店は現在、リナートを月に数回開催している。当日の昼ごろに無料通信アプリ「LINE(ライン)」の公式アカウントで告知し、電話で注文を受け付ける形だ。「リナートボックス」と名付けたパスタとイタリア総菜セットやラザニアとサラダのセット、オリジナルピザなどその日の地元食材を吟味して詰め合わせたメニューを提供している。

 「数量は限られるが、常連客を中心として徐々に認知度が上がり、告知から数十分で完売するのでありがたい」と末永さん。購入者から「おいしかった」「また楽しみにしている」などの声をもらい、店のスタッフは手応えを感じている。

 店は昨年、オープン20周年を迎えた。本県沖を震源とする昨年3月の地震など度重なる自然災害や新型コロナウイルス禍で営業に苦労した時期もあったが、テイクアウトに注力するなど活路を見いだして明かりをともし続けてきた。

 末永さんは「20年間の店の歩みは生産者とお客さんをはじめとした人のつながりや支えがあってこそ。リナートのような取り組みが、ほかの飲食店にも広がればうれしい」と語る。(高橋由佳)

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 トラットリア・ラ・ワサビは伊達市保原町市柳町1の1。営業時間はランチが午前11時30分~午後2時30分、ディナーが午後5時30分~同8時。定休日は水曜日と第1、3火曜日。問い合わせは同店(電話024・575・5363)へ。