野馬追、女性騎馬武者の出場条件検討 南相馬市が初のアンケート

千年の歴史を誇る国の重要無形民俗文化財「相馬野馬追」の継承を巡り、福島県南相馬市が女性騎馬武者の出場条件などについて検討を進めている。現行は女性騎馬武者が出場する場合に年齢制限などがあるが、騎馬武者数が減る中、男女平等の観点からも変更を求める声が一部で上がっているためだ。市は初めて騎馬会の全会員にアンケートを行い、結果を基に議論を深めたい考えだ。時代の波か、伝統か。関係者は頭を悩ませている。
女性騎馬武者の出場条件は時代によって変化してきた。南相馬市博物館によると、当初は出場を認められていなかったが、1947(昭和22)年に解禁され、6年後の53年に初めて芸者の女性が参加したことが本紙の報道などで確認できる。
残っている記録では84年に「(参加する場合は)未成年の未婚者で、化粧はしてはならない」という条文が騎馬会決定事項に明文化された。現在は「未婚の20歳未満」となっている。
3年ぶりの通常開催となった昨年の野馬追では変化があった。新型コロナウイルス感染拡大の影響により2020年から2年連続で規模が縮小され、この間に参加できなかった女性騎馬武者がいたことから、未婚の20、21歳計5人の出場を特例で認めた。
それでも昨年の野馬追は出場騎馬数が50年ぶりに350騎を下回り、337騎にとどまった。騎馬数の減少傾向に危機感を抱く市は昨年12月、継承の在り方を尋ねるため、五郷騎馬会の全ての会員約450人を対象に初めてアンケートを実施。減少理由について意見を聞いており、結果の取りまとめを進めている。
女性騎馬武者の参加条件緩和を巡っては、会員の間で賛否が分かれている。「条文は女性を年齢で区切っているだけではないか」と一定の理解を示す会員がいる一方で「騎馬武者の数が減っても、武家文化の本来の姿を継承するには女性騎馬の制限はやむを得ない」と慎重な意見も根強い。
国立歴史民俗博物館の松尾恒一教授(民俗学)によると、性別によって異なる祭事・祭礼への参加条件を緩和する動きは、一般的に集落の人口減少などを理由に太平洋戦争後から出てきたという。今後の祭事などの在り方について、松尾教授は「存続させて地域住民同士の交流が深まる機会を確保することが大事だ」と継承の重要性を指摘した上で「地域の人々がよく話し合い、納得した上で在り方を決めてほしい」と話す。(坪倉淳子)
熱中症対策、日程も課題
相馬野馬追を巡っては、7月の最終土、日、月曜日としてきた開催日程も検討課題の一つに挙げられる。
近年は異常気象が続く影響で熱中症の危険があるため、涼しい時期での開催が提案されていることが背景にある。「何かあってからでは遅い。人と馬の命を考えなければならない時期に来ている」と早急な議論を求める会員もいる。
ただ、開催時期を見直せば神事としての意義が薄れることを懸念する声も少なくない。ある会員は「野馬追は神社の祭りでもある。現代人の都合で簡単に変えてしまっていいのだろうか」と疑問を投げかけた。
女性の参画、開催日程のいずれも、伝統文化の継承に向けて避けては通れない課題だ。会員の一人は「野馬追は相馬地方にとってなくてはならない存在。住民がもっと関心を持ってもらえればありがたい」と議論の広がりに期待を寄せた。
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