双葉と英の絆、橋渡し ALT2人「第二の故郷」、友好都市へ

 
双葉町の子どもたちに寄り添い続けているアンソニーさん(右)とフィリップさん=双葉町

 双葉町は、英国東部にあるハル市とビバリー町との友好都市締結に向けた準備を進めている。橋渡し役になったのは、東日本大震災前から約15年にわたり双葉町の小中学校で働く英2市町出身の外国語指導助手(ALT)の男性2人。町は英2市町と友好都市を結ぶことで、将来的に児童生徒の派遣などで異文化交流による教育振興につなげたい考えだ。

 2人は、ハル市出身で双葉中に勤めるアンソニー・バラードさん(58)と、ビバリー町出身で双葉南・北小に勤務するフィリップ・ジェリーマンさん(41)。2011(平成23)年3月11日の震災と東京電力福島第1原発事故で全町避難を強いられた際、2人は故郷を離れた町民や保護者から受けた言葉を今も心に留める。「双葉の子どもたちを見守ってほしい」

 町が役場機能を移した埼玉県加須市に同行し、市内の学校に混じって授業を受ける子どもたちのそばを離れなかった。慣れない環境に不安を抱える子どもたちが多い中、心の支えになろうと努めた。ある日、保護者から「残ってくれてありがとう」と感謝の言葉をかけられた。「双葉は第二の故郷。子どもたちを双葉に返す責任がある」。2人の胸中に強い思いが芽生えた。

 2人が日本で働くきっかけになったのは「広い世界を見てみたい」という思いだった。地元郵便局で約20年働いたアンソニーさんは関心があった日本に旅行。双葉高のALTだった友人を訪ねると、豊かな海や山に包まれた双葉町の美しい自然が気に入った。引き寄せられるように自らもALTの道を志し、転職した。

 フィリップさんは学生時代に世界中を旅し、最も興味を引かれた日本で働くことを決意した。ALTになった2人は千葉県の学校で出会い、08年に双葉中へ赴任したアンソニーさんに誘われ、フィリップさんも双葉町で働くことになった。

 原発事故の影響で町の小中学校は14年春、いわき市に仮設校舎を構え、今も避難先での授業を余儀なくされたままだ。2人は児童生徒の英語教育に励みながら、文化や習慣の違いを認め合い、相手を思いやる心を養う異文化交流の窓口も担っている。

 2人が目指すのは、震災と原発事故で苦難の道をたどった町の歴史や自身の経験を、自分の言葉で表現できる人材を育てることだ。

 アンソニーさんは「子どもたちの心を開き、世界を広げていきたい」と語り、フィリップさんは「双葉に学校が帰るまで、子どもたちを見守ることが僕たちの責務だ」と意気込んでいる。

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 双葉町の伊沢史朗町長らでつくる派遣団が15~22日の日程で英国を訪れ、2人の古里に感謝の思いを伝えるとともに、友好都市締結の準備を加速させる。

 参加するのは、伊沢町長や伊藤哲雄町議会議長、舘下明夫教育長、アンソニーさん、フィリップさんら8人。17日にハル市とビバリー町に各首長を表敬訪問する。フィリップさんの家族とも面会する。

 派遣団は訪英中、原子炉火災を経て100年以上の廃炉計画に挑む原子力関連施設の集積拠点「セラフィールド」の視察、英国県人会「ロンドンしゃくなげ会」との交流会なども予定している。福島民友新聞社から渡辺晃平浪江支局長が同行取材する。