裏切られた期待「2度にわたり地獄に」 原発事故強制起訴判決

 
東京高裁判決を受け、「全員無罪」と書かれた紙を掲げる福島原発刑事訴訟支援団のメンバー=18日午後2時10分、東京高裁前

 午後2時過ぎ、東京高裁前。「全員無罪 不当判決」の紙が掲げられると、関係者からは「ふざけるな」「許せない」と怒号が飛んだ。

 「2度にわたり地獄にたたき落とされた気分だ」。双葉病院に入院していた父健蔵さん=当時(99)=を亡くし、大熊町から水戸市に避難した菅野正克さん(78)は法廷で判決内容に耳を傾けた。

 裁判記録をノートに書き留め続けてきたが、この日は「控訴棄却」との主文が読み上げられた瞬間、期待を裏切る判決にメモを取る手が止まった。判決理由の読み上げでは、検察官役の指定弁護士の主張を否定する言葉が繰り返され「被害者のことは念頭にないと感じた」。被告2人に目をやると「無罪は当然だという表情に見えた」という。

 なぜ父親は死ななければならなかったのか。真実が知りたい一心で一審から傍聴を重ねてきたが、その答えは分からないまま控訴審の判決公判は幕を閉じた。菅野さんは「この判決では亡くなった人が浮かばれない」と力なく話した。

 高裁前で「全員無罪」の紙を掲げた福島原発刑事訴訟支援団の古川好子さん(59)は「これほどたくさんの人が被害を受けているのに、たった44人の過失致死の責任さえ認めないなんて」と憤った。自身も避難先で父親が命を落とし、今でも「原発事故がなければ」との思いが消えない。「今後のことにも関わるので、これからも責任の所在を追及していきたい」と力を込めた。

 遺族「これ以上続けても」

 午後2時2分、自宅テレビに映し出された「3人に無罪判決」の速報に、大熊町から双葉郡内に避難して生活する女性(70)は肩を落とした。「やっぱりそうなったか。悔しい、悔しい」

 女性は双葉病院系列の介護老人保健施設に入所していた両親を避難中に亡くした。これまで一審、二審を計20回以上傍聴してきたが、判決には期待が持てなかったことから自宅で見届けることにした。

 「なんと両親に報告したらいいのか」と女性は戸惑う。控訴審で採用されず実現しなかったが、裁判官には福島第1原発の現場検証を行い、現場を見た上で判断してほしかったと強く思っている。

 上告については「納得はしていないけど、これ以上続けても難しいのかな」と言葉を振り絞った。