二審も無罪判決...法廷内にため息 東電旧経営陣、傍聴席は見ず

 
判決を受け、記者会見する石田弁護士(中央)ら=18日午後5時10分、東京都内

 「控訴を棄却する」。東京電力福島第1原発事故を巡り、東京高裁で18日に開かれた東電旧経営陣3人に対する控訴審判決。一審と同様の無罪判決を言い渡す裁判長の言葉に、傍聴席からはため息や驚きの声が漏れた。

 旧経営陣側から武黒一郎(76)、武藤栄(72)両元副社長が出廷。裁判長の方を向いて、証言台に並んで立った2人は、控訴を棄却するという裁判長の言葉に特に反応せず、一礼をして被告人席に戻った。その後約1時間40分に及んだ判決理由の読み上げを、武黒氏は目をつぶったまま微動だにせず、武藤氏は手元でメモを取りながら、それぞれ静かに聞いていた。

 裁判長が淡々と読み上げる判決理由の中で、争点となった国の地震予測「長期評価」の信頼性などは否定された。「証明は不十分」「事故を防げたと認められない」といった言葉が繰り返され、検察官役の指定弁護士は時折首をかしげ、裁判長に険しい視線を向ける場面もあった。


 一審の無罪判決から3年4カ月。旧経営陣の責任はなかったとする判決内容に、傍聴席には判決に対する憤りや落胆が広がったように感じた。閉廷後、傍聴席で一人の女性が「恥ずかしくないのか」と大声を上げた。裁判長に向けて発せられた言葉だろうか、それとも被告人か、両方か。2人の元副社長は傍聴席の方へ視線を向けることもなく、静かに法廷を後にした。(坂本龍之)

 指定弁護士「容認できない」

 検察官役の指定弁護士5人は閉廷後、都内で記者会見した。石田省三郎弁護士は「長期評価の信頼性を全面的に否定した判決は、到底容認できない」と判決を批判した。判決内容を詳細に分析して、上告の可否について改めて検討する考えを示した。渋村晴子弁護士は、東京高裁が福島第1原発の現場検証をせずに判決を出したことを問題視し、「津波を意識せざるを得ないことは現場に行けば一目瞭然。民事訴訟の裁判官は現場に行っている。行くべきだった」と指摘した。

 旧経営陣を告発した福島原発告訴団も記者会見を開き、武藤類子団長は「本当に悔しく、多くの被災者にとって納得のできない判決。上告してほしいと思う」と時折声を震わせながら語った。被害者参加代理人の海渡雄一弁護士は「一審判決を無批判に是認した判決」と批判した。

 原発事故を巡る株主代表訴訟で原告代理人を務める河合弘之弁護士は、強制起訴の裁判で明るみとなった記録が、株主代表訴訟で東京地裁が出した「勝訴判決」につながっているとした上で、「原発事故の真相究明という意味では強制起訴の裁判の成果は大きい。無罪だからといって努力が水の泡になるわけではない」と語気を強めた。