高齢者の「免許のない生活」支援、福島県でも試行錯誤

 
タクシーの運転手(左)と会話をする遠藤さん夫妻。「外出のきっかけになる」と話す=本宮市

 福島市で昨年起きた、97歳男性の軽乗用車が暴走し5人を死傷させた交通死亡事故などを受け、運転免許証返納に注目が集まっている。一方、高齢者にとって「車がないと生活が難しい」という現状も。農林水産政策研究所の推計では自宅から500メートル以内に生鮮食料品店などがなく、車も利用できない65歳以上は2015年時点で全国に825万人いる。車を運転しない高齢者の通院や買い物などをいかに支えるか。本県でも試行錯誤が続く。

 「外出のきっかけになる」。本宮市の遠藤利雄さん(89)は昨年12月下旬、市内で行われている自宅と病院などの施設を結ぶ実証運行「まちタク」を利用した。到着したタクシーに妻君子さん(86)と乗り込み「助かる」と言葉を交わした。

 遠藤さんは長年車を運転してきたが、3年前に車検時期を迎えたことや自身の年齢も考慮し運転免許を返納した。運転技術には自信があり、家族の車を運転する機会などを失わないため返納しない選択肢もあったが「毎日乗っていた車を10日、1カ月と間隔が空けば運転することに後ずさる。たまに乗るではだめだと思った」。返納後、当初は「外に出る機会が減った」と話すが、3年を過ぎ、不便を感じながらも何とかこうした生活に慣れてきたという。

 本宮市によると、まちタクでは、地区は限られるが市役所や医療機関など指定施設と自宅を行き来する際、定額でタクシーを利用できる。免許返納した人の日常生活を支えるための移動支援も目的で昨年11月末現在、約590人が登録。市は今後、郊外中心に運行するデマンドタクシーなども含め、地域公共交通の利便性向上を目指す。遠藤さんは「今までタクシーやバスを使っていなかった自分たちには気軽に利用できる仕組みだ」と喜んだ。

 スーパーなどが高齢者の元を訪れる支援も定着してきた。このうち福島市の「いちい」は、全国で移動販売車を展開する「とくし丸」(徳島市)と連携。生鮮食品や日用品などを軽トラックに積んで自宅を訪問する移動販売を2014年10月から実施し、現在中通り中心に12台が稼働している。

 いちいによると、利用者の9割以上が高齢者。19年の高齢ドライバーによる池袋暴走事故以降、問い合わせが増えた。高齢者本人から「免許を返納するから自宅に来てほしい」という依頼のほか、離れて暮らす娘が高齢の親を心配して移動スーパーを依頼するケースもあったという。鈴木康雅執行役員(63)は「移動の手段がなく困っている人を助けたい」と話した。

 県警、高齢者の相談受け付け

 県警によると近年、高齢運転者による事故の割合は増加している。高齢化に伴い、高齢者の免許人口が増加していることも要因の一つという。県警は高齢運転者の運転免許証について、各署や運転免許センターの窓口で相談を受け付けているほか、安全運転相談専用ダイヤル「#8080(シャープハレバレ)」を設けている。家族の相談にも応じている。