【狙う米国市場<上>】コメ輸出、復興象徴に

 
「天のつぶ」のフェアを開催している量販店。売り場には他県産の多様なコメが並んでいる=米ロサンゼルス

 内堀雅雄知事は21日、県産食品の輸入規制が撤廃された米国での販路拡大に向けたトップセールスを終え、帰国した。約3年3カ月ぶりの海外訪問で前半はロサンゼルス、後半はワシントンを訪れ、コメや日本酒の新たな販路に道筋を付けた。人口3億3000万人の巨大な市場を誇る米国への県産品輸出に向けた課題を探った。(報道部・渡辺美幸)

 「県産のコメをしっかり輸出できることは福島復興の一つのシンボルになる」。現地量販店の運営企業と県、JAの3者間で年100トンの輸出の合意に至り、内堀知事は記者会見でこう述べた。農業産出額の4割をコメが占める本県。人口減や食生活の多様化により国内でコメの需要が年10万トンのペースで減る中、毎年のように減産を強いられる農家にとって米国市場に一定規模の販路が見いだされた意義は大きい。

 内堀知事も「国内ではコメの消費が飽和状態にあり、供給を減らさなければならない厳しい現実があるが、世界に目を転じると市場は無限に広がっている」と手応えを語った。米国での和食人気やカリフォルニア米の不作に、円安などが重なり、いまは日本産米を輸出する好機にある。

 ただ、それは日本国内の他産地にとっても同じだ。知事が店頭プロモーションを行ったロサンゼルスの日系量販店のコメ売り場には、本県が売り込んだ「天のつぶ」のほか、北海道産ゆめぴりか、新潟県魚沼産コシヒカリ、宮城県産コシヒカリ、秋田県産あきたこまちなどが5キロ・20~30ドル(約2500~4000円)ほどの価格帯を中心に並ぶ。全農県本部の渡部俊男本部長は「米国の日系スーパーなどでは日本国内と同じように産地間競争が起きている」と説明する。

 米国でコメを食べている人はごく一部だ。日系量販店の来店客の中には週何回かコメを炊く人もいたが、東南アジアなどが主産地の長粒米になじみがあった。日本産米の需要を伸ばすには、物価高が続く米国で、安価に手に入る長粒米ではなく、品質の高さを強みとする日本産米を選んでもらわなければならない。

 内堀知事は「まずは特に日系人が多いロサンゼルスなどで、競合しながら日本のコメのシェアを伸ばしていくこと」と指摘する。その上で産地間競争で一歩抜け出すには何が必要か。飲食関係者を招いた天のつぶの試食会で、現地の日本人シェフは「冷めてもおいしい」「和食に限らずアレンジしやすい」と、さまざまなジャンルの飲食店や弁当など中食での活用が期待できると紹介した。

 天のつぶの特性や品質の高さなどに加え、内堀知事は「日本の産地の中でも福島が持つ特別なストーリーを伝えること」が鍵になるとみる。トップセールスで管野啓二JA福島五連会長は、東日本大震災が起きた2011年にデビューした天のつぶを復興の歩みと併せて紹介した。知事はこうしたことを踏まえ「原発事故のネガティブなイメージが、福島のコメを食べ、応援しようというポジティブな気持ちに変わる」と話した。