【狙う米国市場<下>】福島県産日本酒、商機は十分

 
4月以降、県産酒コーナーが新設される高級ワイン店で握手を交わす内堀知事(右)とセンテーノさん。西海岸の発信拠点として期待される

 ビバリーヒルズなど高級住宅地に近い、米ロサンゼルスのショッピングモールの一角にあるワイン店。有名な銘柄のワインボトルが両側の壁一面を埋める光景は壮観だ。現在、県産を含め5~6銘柄が棚に置かれているだけの日本酒だが、この店内に4月以降、県産酒コーナーが新設される。セレブらのご用聞きも務めるという店主のファン・センテーノさんは「ワイン好きは日本酒も好んで買う」と商機をみる。

 玄関口から店内を全て見渡せるくらいの控えめな店構えだが、商品の大半は高級ワイン。ウイスキーやリキュールも並ぶものの、ここに大型の冷蔵ケースが新設され、県産酒の銘柄がそろえば注目を集めるのはもちろん、おしゃれな試飲スペースを活用して県産酒の魅力を認知してもらえる機会が広がると感じた。

 県が4年半前にニューヨークの酒販店に設置した県産酒コーナーは順調に売り上げを伸ばし、県産酒を扱う飲食店なども30店以上あるという。ロサンゼルスの設置期間は店の意向を聞いて検討していくことになるが、西海岸の新たな発信拠点として定着させるには、できるだけ早期に売り上げを確保し、継続してもらうことが重要になる。

 現地での県産酒の購買層には飲食店が多く、「和食レストランの料理が日本酒と合うのは当たり前。もっといろいろ挑戦してみたい」とセンテーノさん。最近試した中では、メキシコ料理のタコスとの相性が良かったという。内堀雅雄知事は「日本酒がさまざまな食と合うというペアリングを、一緒に開発していくことも大事だ」と応じた。

 県は訪米中にロサンゼルスとワシントンで1回ずつ開いた交流レセプションでも、県産酒とともに、県産食材を使った和洋中さまざまな料理を振る舞った。「和食ブーム」といわれて久しく、輸出拡大に向けた日本国内の産地間競争も激化している。さらに販路を広げるには、県産酒や農畜産物の品質を理解してもらった上でより斬新な発想をしていく必要があるのかもしれない。

 東日本大震災と東京電力福島第1原発事故から3月で丸12年、「FUKUSHIMA」を銘打った店頭プロモーションでもレセプションでも、取材の範囲では来店客や参加者から県産品への安全性を疑う声は聞かれなかった。内堀知事は「直接話すと感触や反響が非常に良かった」と手応えを語った。一方、新型コロナウイルスの影響で自身の海外訪問が約3年3カ月ぶりとなったことに「この3年間も続けていられれば、福島復興にプラスになった。3年間の重みを感じている」と悔しさをにじませた。

 「福島の品質の高いコメや酒の新たな市場を開拓していくことが『ふくしまプライド。』につながり『FUKUSHIMA』の定義を変えていくための一番真っすぐな手段になる」。訪米を終えた知事の言葉は、県産品の販路拡大に向け現地でさまざまな思いをじかに聞いたからこその決意を感じさせた。(報道部・渡辺美幸)