両陛下、入所高齢者ら励ます オンライン視察、奥会津民具に興味

 
天皇、皇后両陛下を前に、回想法を実演する入所者ら=三島町・特別養護老人ホーム桐寿苑(吉田義広撮影)

 天皇、皇后両陛下は25日、三島町の特別養護老人ホーム桐寿苑(とうじゅえん)をオンラインで視察され、入所者を激励した。施設での生活や奥会津に根付いた民具などについて尋ね、新潟・福島豪雨で被災したJR只見線の全線での運転再開を喜ぶ一幕もあった。

 両陛下は、中丸一雄さん(83)ら入所者3人と、施設を運営する社会福祉法人みしまの秦千代栄理事長と懇談した。除雪車が入れない道で雪を踏み固めて道をつくる「雪踏み俵」や、雪道を歩くための「かんじき」など、豪雪地帯の奥会津ならではの民具に興味を示し、材質などを尋ねた。

 両陛下のいる皇居・御所には、すり鉢やすりこぎなどといった民具が事前に届けられた。両陛下はすり鉢とすりこぎを手元に置いて説明を聞き、入所者が実演する様子に見入った。入所者が金山町特産の赤カボチャを使ったようかんを食べる様子を見た皇后さまは、赤カボチャの大きさや味の特徴などを質問した。

 入所者から新潟・福島豪雨の被害について聞いた両陛下は「ご家族に被害はなかったですか」などと気遣った。さらに昨年10月1日に全線が11年ぶりにつながった只見線については、会津の人たちが喜んでいるとの説明に「沿線の風景が美しいですね」と述べた。

 両陛下は、予定の1時間を超える1時間45分にわたって視察した。中丸さんは「お話をできたことは生涯の宝。両陛下は地方のことも考えておられ、とても心強かった」と話した。秦理事長は両陛下が入所者との懇談の際、時折笑みを浮かべた場面が印象的だったとし、「奥会津の暮らしや豪雨災害など興味深く聞いていただいてありがたかった」と語った。今回の視察は9月の敬老の日にちなんだ行事。宮内庁によると、英国のエリザベス女王の国葬参列などで両陛下の日程の都合がつかず、このタイミングになった。

 県によると、新型コロナウイルスの感染拡大後、天皇陛下がオンラインで本県を視察したのは3度目。2020年11月に福島赤十字病院(福島市)から新型コロナへの対応状況について説明を受け、21年4月には東日本大震災から10年が過ぎた被災地激励のため、双葉、大熊両町の被災者を見舞った。

 民具の記憶に心温まる言葉

 県内の高齢者を激励しようと25日、三島町の特別養護老人ホーム桐寿苑(とうじゅえん)をオンラインで訪問された天皇、皇后両陛下。入所者が取り組む「回想法」を視察し「とても興味深いし、意義深いことですね」と高い関心を寄せられたという。両陛下の気さくで心温まる言葉の数々に、入所者は改めて健康長寿を誓った。

 回想法は、高齢者が若い頃に使った民具など、なじみ深いものなどをきっかけに過去を思い出すことで認知機能の改善につなげる取り組みで、昔の生活道具を数多く所蔵する県立博物館と連携して実践している。この日は奥会津の雪深い生活を感じてもらおうと、かんじきと雪踏み俵を取り上げた。

 県庁からオンラインで参加した内堀雅雄知事によると、入所者は「かんじきは雪が踏み固められていないと潜ってしまう」「大きな雪踏み俵でも上から雪が入ってくる」など、民具を実際に使っていた当時の思い出話に花を咲かせた。両陛下からは「誰が作ったんですか」「きょうの寒さはどうですか」などの質問があり「豪雪地帯の厳しさ、寒さをきっかけにお話が広がった」(内堀知事)という。

 説明に当たった県立博物館の山口拡(ひろむ)主任学芸員は「考えていたよりも多くの質問を頂いた」と両陛下の高い関心を感じた様子。「両陛下が入所者の話に声を上げて笑う様子が印象的だった。お言葉を励みに活動を続けていきたい」と決意を新たにした。

 かんじきと雪踏み俵は御所にも用意され、「現地の臨場感を感じながらお話いただいた」と内堀知事。「今後も両陛下のお心遣いを支えに、高齢者が安心して生き生きと暮らせる地域の実現に向けてしっかり取り組んでいく」と誓った。