廃棄野菜からプラ原料、ストローなどに活用 南相馬の「トレ食」

 
植物由来100%のストローやペットボトルを手にする沖村さん

 廃棄される野菜をプラスチックに―。南相馬市のベンチャー企業「トレ食」は、スーパーの加工途中で捨てられるなどした野菜の端材から、プラスチックの原料となる「セルロース」を効率的に取り出す研究を進めている。試作品として植物由来100%のストローなどを作り出すことに成功した。社長の沖村智さん(45)は「南相馬市のふるさと納税の返礼品にもできれば。福島の地で脱炭素社会をつくるモデルとなりたい」と意気込む。

 トマトの葉、ブロッコリーの茎、キャベツの芯。市内にあるトレ食の工場には、1日当たり3トンの廃棄野菜が集まる。農家やスーパーから同社が買い取ったものだ。野菜を特殊な機械に通すことでセルロースを抽出し、粉末に加工している。

 プラごみは石油由来が多く、増え続ければ環境に影響を及ぼす。一方、試作したストローとペットボトルは植物由来100%のため分解され、土に返る。製品は素材の色みから茶色がかっており、沖村さんは「漂白剤を使えば透明にできるが、薬剤は使わないと徹底したい」と話す。「これからの事業は、やればやるほど世の中が良くなるものでなければならない」。環境保護の強い意識は、縁のなかった南相馬で生きる原動力となっている。

 長野県出身の沖村さんが南相馬市で起業したのは2018(平成30)年。災害で傷ついた地域に根を張り世の中を良くする事業を起こそうと、東京電力福島第1原発事故で大きな被害を受けた浜通りを選び、妻と共に東京都から移住した。

 地元雇用に力を入れており、社員20人のうち地元出身者が半数を超える。プラ樹脂製造を手がけるいわき市の企業トラスト企画とも協力しながら、脱炭素や食品ロス削減への取り組みを進める考えだ。沖村さんは「人と動物、地球、みんなが笑って生きられる社会を目指す」と熱意を語った。