マスク新基準、素顔の卒業式へ 保護者ら歓迎、現場対策は試行錯誤

新型コロナウイルス対策を巡り、政府が10日、卒業式でのマスク着用について児童生徒、教職員は「着用せずに出席するのが基本」とする指針を示したことを受け、福島県内の学校や保護者からは3年に及ぶ新型コロナ禍を振り返り「最後は素顔で式ができそうで良かった」と歓迎する声が上がった。ただ、感染拡大への心配も残っており、教育現場は会場の換気や合唱時の対応などで試行錯誤が求められそうだ。
「卒業式は生徒たちの記念すべき日。マスクのない卒業式には賛成だ」。郡山市の郡山三中は、生徒たちがマスクを外して式に臨む方向で検討している。
校歌斉唱や入退場時など場面に応じて着用を呼びかける考えだ。式前の練習については、高校受験を控える生徒もいるため、原則着用とする。安田良一校長は「子どもたちの意見も尊重しながら、具体的な方法を検討したい」と話した。
いわき市の磐城緑蔭中は卒業式や新学期からのマスク着用について、基本的には個人の判断に任せる意向だ。3年ぶりに高校と合同で卒業式を行い、出席制限も緩和する方針を決めた。
山崎学校長はマスクが生徒、教職員の意思疎通に影響を及ぼしていたと指摘。今回の動きを「コロナ禍が収まりつつある象徴と感じる。このまま段階的に緩和されてほしい」と歓迎した。
「会津は寒いので、窓を開けて換気をするのも限界がある」。会津のある中学校の校長は、政府が指針で示した感染防止対策の難しさを挙げる。
公立中学校の卒業式が行われる3月13日時点で県立高校の前期選抜は終わっているが、23日の後期選抜が控えている。校長は「受験生や保護者には感染を不安に思う人もいるだろうし、マスクを外すことを強制はできない」としつつ「3年生は入学以来、ずっとマスクを着けていた。最後ぐらいはマスクを外した姿で式に臨ませたいのが本音だ」と複雑な思いを明かした。
感染防止求める声も
「(感染の)リスクはあるかもしれないが、晴れの舞台で素顔を見られるのはいいことだと思う」。中学3年生の息子を持つ白河市の三浦勝さん(43)は喜びを口にした。「(息子は)小学校の卒業式からマスクを着けて生活していた。3年ぶりにマスクのない行事になってほしい」と語った。
小学6年生の子どもがいる伊達市の男性(38)は、対策を取ればマスクを不要とする考えに理解を示すが「一人一人の価値観が違う問題なので難しい」と悩ましさを挙げる。
喜多方市の自営業新谷正樹さん(42)は小学校のPTA会長を務めており、次女(12)の卒業式に出席する予定だ。「制限のない式になることにほっとしている。今までマスクで隠れていた笑顔が見られる」と前向きに受け止める。一方で「感染が完全に収まったわけではない。心のどこかで不安は残る」とも語り、感染防止策の徹底を求めた。