恐竜も鳴き声で会話?...「喉の化石」世界初発見 県立博物館など

 
ピナコサウルスの喉頭骨の復元イメージ図(制作・Takumi)(上図)と喉の化石の複製(写真下)。輪状骨(下)に付いている披裂骨が動き、音程などを調節する

 県立博物館(会津若松市)などの国際研究グループは15日、世界で初めて恐竜の喉の化石を発見したと発表した。恐竜の鳴き声は想像するしかなかったが、研究グループによると、見つかった喉の化石には現在の鳥類と類似点が多く、恐竜も鳥類のように多彩な鳴き声でコミュニケーションを取っていた可能性が高いという。

 研究グループは「今回の発見が謎に迫る大きな一歩になる」としている。

 発見したのは博物館の学芸員・吉田純輝さん(31)をリーダーに北海道大総合博物館の小林快次(よしつぐ)教授(51)、米国自然史博物館のマーク・ノレル博士でつくる研究グループ。15日、研究成果を英科学誌コミュニケーションズ・バイオロジーに発表した。

 化石はモンゴル・ゴビ砂漠の約8400万~7200万年前(白亜紀)の地層から2005年に発掘された草食恐竜「ピナコサウルス」のもので、米国自然史博物館が見つけ、「舌の化石」とされていた。

 気管の入り口付近に正体不明の骨があったことから、北海道大大学院理学院で恐竜の喉や舌について研究していた吉田さんらが18年から詳しく調査。爬虫(はちゅう)類や鳥類の骨格標本100点以上と比較し、喉の入り口(喉頭)の骨と突き止めた。喉の骨は小さく薄いため、水で流されたり、発掘の過程で壊れたりして見つかっていなかった。化石の保存状態が良く全身のほとんどの骨がつながっていたため、喉の化石と特定できたという。

 鳥類に似た特徴

 喉頭骨には、空気や音の出入り口になる輪状骨(りんじょうこつ)と、左右に開閉して音程などを調節する披裂骨(ひれつこつ)がある。吉田さんによると、ピナコサウルスの喉頭骨には▽輪状骨と披裂骨の間に関節がある▽披裂骨に大きな突起がある―など鳥類に似た特徴があった。披裂骨を動かし、喉を大きく開閉するのに適した構造をしており、多様な声を出すことができたとみている。

 吉田さんは、ワニなどの爬虫類は披裂骨が小さいため単調な鳴き声しか出せないとし「もっと爬虫類に近いと思っていたので驚いた」と話した。今回の発見だけでは鳴き声の再現は難しく、「発声には体のほかの部分も関わってくる。今後の調査研究や標本収集で再現に近づけていきたい」とした。

 16日から展示

 県立博物館は16日~3月10日に喉の化石の複製を展示する。