食品ロス削減へ新事業 未利用食材を活用、無添加ドッグフードに

障害者の就労支援に取り組む一般社団法人一穂(いっすい)(福島県福島市)が、地元ペットサロンと連携して未利用食材を企業から仕入れ、無添加の犬の餌を製造する新規業務を始めた。食品ロスを削減し、障害者の就労機会を増やす取り組みとして、スーパーやペット事業を展開するいちい(同)などの地元企業が複数参画。現在は少量生産だが、供給を本格化させていく予定だ。
一穂が営む市内の就労継続支援施設で、障害がある女性らが肉の脂身を丁寧に取り除き、細かく刻んでいた。野菜などと煮込んだ後、真空パックして商品化するという。
積まれた段ボールを指し、菅野和江施設長が「全部、今朝届いた『食材』。毎日これだけの量が出る」と説明した。
肉はいちいの加工センターで1日10~15キロ生じる端材で、これまでは有料処分されていた。豆腐店のおからや油加工業者のエゴマなど、原材料はほぼ全て地元企業から無償で提供される。野菜は一穂の施設で元々1次加工しており、その際に多く出る皮などを使う。
これらを混ぜてできる犬の餌は無添加で栄養価が高く、人間も食べられる品質だという。事業を提案し、製造・加工業務を一穂に委託する同市のペットサロン「ワンズ」の菅野孝之社長は「食品ロスが減り、犬の健康にもいい。みんなで成功させたい」と意気込みを語る。
商品名は「ワンズフード」で、売上金は一穂に寄付される。同サロンで販売しているほか、オンラインで取り扱う準備も進んでおり、一穂は需要に応じて生産量を拡大させる。
一穂はまた、古くなったランドセルや子ども服を市民から募り、犬用の革製品などを作製する業務にも着手している。仕事の多様化で就労人数を増やし、原価を抑えた未利用資源の活用で給料の向上にもつなげる考えだ。
菅野施設長は「障害者の働く場を確保するのは容易ではないが、今回うまく形になりつつある。訓練を積むことで一般就労の道も開けていく」と期待する。
力入れる小売業
県が昨年6月に初めて策定した「食品ロス削減推進計画」によると、県内の2019年度の食品ロスは約7万600トン。このうち事業系は35%で、業種別では「食品小売業」が最多の約1万200トンを占める。
国連は持続可能な開発目標(SDGs)に「30年までに小売・消費レベルで1人当たりの食料廃棄量を半減させる」と明記した。県も19年比で14%の削減を目指し、未利用食品の有効活用を推進している。
いちいの佐藤明商品本部長は今回の連携について「環境維持の取り組みは積み重ねが重要」と説明。「小売業は物を売る以外の責任もある。共に社会を築いていきたい」と話し、自社店舗での販売や、肉以外の原材料の提供を進める考えを明らかにした。