保育サービス充実・負担軽減「最優先」 政府少子化対策で自治体

 

 岸田政権が目指す「次元の異なる少子化対策」を巡り、本県の多くの自治体は保育サービスの充実・負担軽減を最優先に望んでいることが、福島民友新聞社の調査で判明した。物価高や燃料費高騰などで各家庭の経済的負担が増す中、仕事と子育ての両立や安心の担保を求めた形だ。政府が議論を先行させる児童手当の見直しについては、支出がかさむ時期の拡充を求める声が多い一方、財源は地方負担とせず国費で賄ってほしいとの意見も目立った。

 1月末に各自治体に質問票を送り、今月19日までに全59市町村から回答を得た。

 政府は対策の3本柱として〈1〉児童手当の拡充〈2〉保育サービスの充実・負担軽減〈3〉育児休業制度強化・働き方改革―を掲げる。このうち県内では、最も優先的に実現を望む政策について、24市町村(41%)が〈2〉を選択した。

 主な理由は「支援が手薄な0~2歳児も保育料無償化が必要」(鏡石町)「現在は市町村ごとに保育料が定められ、居住地で負担に差がある」(北塩原村)など。「保育士の配置基準見直しや処遇改善を図り、人手不足を解消する必要がある」(会津美里町)といった声も複数あった。

 政府は、20市町村(34%)が拡充を望んだ「児童手当」を軸に議論を進めている。調査では、見直しが検討される▽所得制限撤廃▽第2子以降の支給額引き上げ▽支給対象年齢の拡大▽その他―の中から最優先してほしい項目も聞いた。

 約6割に当たる34市町村が支給対象年齢の拡大を選択した。現在の「中学生まで」から「18歳まで」に引き上げを検討する政府の姿勢を歓迎しているようだ。

 理由は「年代が上がると学費や習い事などの負担が増える」(田村市)「所得制限撤廃や第2子以降の支給額引き上げで影響がある世帯は限定的」(玉川村)などだった。

 支援策とともに、財源も焦点となる。児童手当の見直しだけでも数兆円規模に及ぶ可能性があり、岸田文雄首相は先月31日の衆院予算委員会で「社会保険、国と地方、給付と負担などさまざまな関係を検討し財源を考えていかなければならない」と説明した。

 地方負担の可能性を示唆する政権に対し、自由記述で「自治体の財政によって格差が生まれないよう、国の制度として実施してほしい」(福島市)などと訴える自治体も複数あった。

 政府は、年度内に少子化対策のたたき台をまとめる。

 人口流出、悩み浮き彫り

 政府が見直しの議論を進める少子化対策について、福島民友新聞社が実施した県内59市町村アンケートではさまざまな意見が寄せられた。検討されている案だけでは不十分との指摘も多く、人口流出が続く本県自治体の悩みが浮き彫りになった。

 児童手当は与野党とも「所得制限の撤廃」「高校生までの支給延長」を主張している。一方、県内自治体からは「第2子以降の子育てに対する金銭負担が大きい」(飯舘村)など多子世帯への加算を求める声も少なくない。

 多子加算について、自民党内には「第2子に3万円、第3子に6万円」の案があるが、人口減が進む町村部からは「第1子からの児童手当額引き上げ」を望む声も目立った。

 児童手当は所得制限の範囲や金額、対象となる年齢が時の政権によって何度も変更されてきた。会津若松市は「頻繁に制度や解釈を変更することがないよう、しっかり制度設計してほしい」と要望した。

 児童手当の議論が先行する一方、育児休業制度の強化や働き方の是正こそ必要との見方も多い。湯川村は「仕事と子育てを両立しやすい環境を整えることが少子化対策と人手不足解消の第一歩」と回答し、桑折町も「母親に偏りがちな負担を軽減する必要がある」と指摘。手厚い独自支援を行う西会津町は「社会の構造的な部分の改革が必要」と提言した。

 奨学金制度の充実や、東京電力福島第1原発事故に伴う避難者にも柔軟に適用できる制度設計を求める声もあった。

 0~2歳児、独自支援も

 アンケートでは、自治体独自の子育て支援制度についても聞いた。国が原則、無償化の対象外としている0~2歳児の保育料の無償化や給付金の支給など内容はさまざまで、国の動向を踏まえ、新年度から新たな支援策を検討している自治体もあった。

 0~2歳児の保育料無償化に取り組んでいるのは大玉村や只見町、古殿町などで、おやつが無料の自治体もあった。南相馬市は認可保育施設の0~2歳児の保育料が無料で、認可外保育施設の利用者には月額3万7000円を上限に助成している。浅川町は、あさかわこども園の保育料(0~2歳児)の負担額を現在の2分の1から3分の1に軽減する方針で、新年度当初予算案に関連経費を盛り込んでいる。

 給付金については複数の自治体が取り組む。矢祭町は第3子以降の2~11歳に健全育成奨励金として年間5万円を支給している。通学費の助成や在宅育児に対する支援金、子育て用品の購入に使える商品券の配布に取り組む自治体もあった。金山町、飯舘村、棚倉町などは導入を検討しており、金山町は0~3歳児におむつ代として毎月5000円程度、棚倉町は高校生を対象に年額6万円の支給を見込んでいる。