復興財源、26年度以降も 渡辺復興相「必要な事業に万全期す」

渡辺博道復興相は東日本大震災と東京電力福島第1原発事故から12年を迎える3月11日を前に報道各社の取材に応じた。本県の復興に向けては息の長い取り組みが必要との認識を示し、現時点で規模などが定まっていない2026年度以降の復興財源について「必要な復興事業の実施に支障がないように万全を期す」と決意を述べた。
原発事故の帰還困難区域のうち特定復興再生拠点区域(復興拠点)から外れた地域の再生を巡り、すぐに帰還するかどうかを判断できない住民について「判断に悩んでいる住民に寄り添う」と複数回にわたり帰還意向を確認する考えを改めて強調。避難指示解除の対象に「特定帰還居住区域」を新設する政府方針を踏まえ「帰還意向のある住民が安心して日常生活を送れるよう環境整備に取り組む」と意気込んだ。
4月に浪江町に設立する福島国際研究教育機構については「地域のニーズを丁寧に把握する」とし、市町村や地元の事業者、若い世代の要望を踏まえて研究開発事業を進める方針。震災と原発事故の経験については「南海トラフ巨大地震など、将来起こり得る大規模災害時の復興政策に教訓として生かす」と誓った。
渡辺復興相に聞く
―2025年度までの第2期復興・創生期間の終了後も住民の帰還促進など課題は多い。26年度以降の復興財源をどう確保するのか。
「原子力災害の被災地では本格的な復興・再生に向けて中長期的な対応が必要だ。自治体の要望を踏まえ、新たな課題やニーズにきめ細かく対応していく。26年度以降も財源確保に向け、予算の執行状況や事業の進捗(しんちょく)状況を注視しながら必要な復興事業の実施に支障が生じないように万全を期す」
―特定帰還居住区域への帰還促進に向けた取り組みや、すぐには帰還を判断できない住民への対応は。
「まずは帰還する住民が安心して生活できるよう環境を整備する。宅地や道路、集会所、墓地を含めて除染する。帰還意向調査では、すぐに帰還するかどうかを判断できない住民に寄り添うため『保留』の項目も設けている。複数回にわたり丁寧に意向を伺いたい」
―福島国際研究教育機構の研究開発の成果を産業化や雇用創出にどう結び付けるのか。
「地域とのつながりを大事にしたい。知事や(地元の)大学、研究機関、市町村などで構成する『新産業創出等研究開発協議会』を組織する。協議会内に『研究開発』と『広域連携』の二つのワーキンググループを設置し、大学や研究機関、民間企業などに参画してもらう。地元の事業者や若者を集めて市町村ごとの座談会も開き、地域のニーズも丁寧に把握する」
―福島第1原発で発生する処理水の海洋放出に向け、国民の理解醸成や風評対策にどう取り組むのか。
「処理水の処分は先送りできない重要な課題。科学的な根拠に基づく正確な情報について、国内外のさまざまな媒体を通じて発信している。地元産品や観光名所などの地域の魅力を伝えるイベントの開催も支援してきた。こうした取り組みを強化し、政府一丸となって『決して風評被害を生じさせない』との強い決意で引き続き対策に取り組む」
―震災と原発事故の教訓をどのように継承していくか。
「震災の記憶を風化させず、教訓として将来に生かすことが重要だ。ただ、被災地での伝承活動は担い手の高齢化や、自治体の垣根を越えた連携が不足しているなどの課題もある。持続可能な伝承活動を実現するために課題やノウハウを整理し、普及させていく。南海トラフ巨大地震など将来起こり得る大規模災害時の復興政策に生かせるよう教訓として伝えていく」