手に入るだけまだいい方...卵高騰、洋菓子店やスーパー苦境

高病原性鳥インフルエンザが拡大し、鶏卵不足による価格高騰が続いている。卵を大量に使う県内の洋菓子店などは打撃を受けており、卵以外の原料費高騰が追い打ちをかける。一般家庭向けに販売するスーパーは、必要量を確保しようと奔走している。
「値段は上がっているが、それでも供給してもらえるだけありがたい。それくらい厳しい状況だ」。郡山市に2店舗を構えるケーキなどの菓子店「フルラージュ」のオーナーシェフ佐藤豊喜さん(61)は苦しい現状を明かす。
ケーキなどの材料となる卵の仕入れ価格は、前年同期比で約1.5倍まで高騰している。2店舗で使用する量は1カ月で約1トンに上るため、経営面では大きな打撃だ。
それでも「卵が手に入るだけまだいい方」と佐藤さん。東京都内の菓子店の知人からは必要量が手に入らないといった話も聞いており「今後卵が手に入らなくなったり、値段が高止まりしたりすることを心配している」と不安を隠さない。
バターや生クリームなどの乳製品やココアパウダーといった原材料の値段も上がっているが、商品への価格転嫁は追い付いていない。昨年7月に1商品当たり数%の値上げを決断したが、原材料価格は当時よりさらに上がっている。佐藤さんは「再び値上げせざるを得ない状況だが、原材料価格が次々と上がる中で、そのタイミングも難しい」と頭を悩ませる。
価格高騰は飯坂温泉(福島市)の名物「ラヂウム玉子」を扱う店にも大きく影響している。多くの観光客が訪れる阿部留(とめ)商店の3代目で代表の阿部孝義さん(74)は「1月に一部を除き値上げに踏み切った。卵だけでなく箱や包装紙、卵の包み紙も高騰しており、苦渋の選択をせざるを得なかった」と困惑する。
阿部さんは「価格が下がるのに半年ぐらいはかかるかもしれない。『大変ですね』と声をかけてくださる常連さんに励まされているが、先が見通せない」と不安を口にする。
相双地方や宮城県で食品スーパー「フレスコキクチ」を展開するフレスコ(相馬市)によると、販売しているミックスサイズ10個入りの原価が、昨年2月に比べ100円程度上昇しているという。仕入れは年末から年明けにかけて厳しい状況だったが、政府が1月に日本養鶏協会に家庭商品向けへの優先供給を要請した後から品薄感は幾分和らいだといい、担当者は「品切れを起こさないよう、確保に努めたい」と話す。
食品メーカー、販売数量制限の動き
東京商工リサーチによると、マヨネーズや練り物などを扱う食品メーカーは、卵の供給不足が値上げだけにとどまらず、商品の販売数量の制限にまで波及しており、影響が深刻化する可能性がある。このうち練り物商品を扱う企業の一部は卵不足の長期化を懸念し、来冬のおでん商品の減産を検討しているという。
国内の主要食品メーカー200社を対象とした調査では、1月以降の出荷・納品分で価格改定を表明したのは1万5012品。卵を含めた食料品全体で値上げが続いている。