駅周辺に「医・商・住」 変わるいわき中心市街地、次々完成へ

 

 いわき市の中心市街地が大きく変わろうとしている。JRいわき駅周辺の商業施設やホテル、マンションなどが2025年度にかけて次々と完成、開業する見通しとなった。震災復興を見据えて始まった大規模開発は市街地活性化にとどまらず、人口減少に対応するためのコンパクトシティー化の起爆剤としても期待されている。

 次々に完成開業

 駅南口では、先陣を切って1月15日にJRのホテルとエスパルいわきが開業した。北口には松村総合病院が移転し、JR東日本管内初の駅直結病院として開業する計画。JR東といわき市は周辺の約1.5ヘクタールの土地も開発する考えで医療福祉施設や商業施設などでの利用を検討する。

 イトーヨーカドー平店の撤退後に利活用が懸念されていた駅東側の跡地では食品スーパーや生活雑貨テナントを核とする2階建て施設が計画される。駅西側の並木通り開発計画では、21階建てのタワーマンションや4階建ての商業施設の整備が進む。このほか、磐城平城本丸跡地でも城跡公園の計画がある。

 震災契機に開発

 開発の背景には、震災を契機に持ち上がった中心市街地活性化基本計画がある。官民合同で協議会をつくり、落ち込んだ店舗数や居住人口の回復に向け、目標値を定めた計画を作成。当時進行していた並木通りやイトーヨーカドー跡地の開発を組み込みながら、計画に沿った都市整備を進めてきた。

 にぎわい創出が期待される中、関係者がキーワードに挙げるのが、都市機能や住居を集約するコンパクトシティー化だ。市町村合併で誕生した同市は、生活圏が点在する。人口減少を受け、市は各地に拠点を定めた上でのコンパクト化を目指しており、今回の開発をモデルとしたい考えだ。

 相乗効果へ連携

 関係者によると、いわきは人口30万都市だが、いわき駅前を中心とした商圏は10万人ほど。人を呼び込むには連動した出店で駅前全体の魅力を高めることが鍵となる。イトーヨーカドー跡地の整備計画を進める真砂不動産の猪狩達宏社長は「『開発した』で終わってしまうのが一番怖い。一人一人がチャンスと捉えてほしい」と話す。駅前店舗の多くは飲食店のため、エリア内にさまざまな業種の出店が進む必要性を挙げる。

 エスパルいわきと駅前の大型商業施設ラトブなどは新たに組織をつくり、駅前を活用したイベントの検討に着手する。服飾など地元向け中心のラトブに対し、エスパルは土産物や飲食など観光に特化したテナント構成で、駅前商業施設同士の協力体制の構築は円滑だ。ラトブの鈴木雄大社長は「相乗効果を生むために商業施設同士の連携が必要だ」と見据える。
 いわき商工会議所の関係者も、駅前が一体となった動きを期待する。「開発された施設を中心に新規出店やイベントが活発となり、点ではなく面での周遊性の構築が進んでほしい」(いわき支社・大内義貴)

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 いわき市中心市街地活性化基本計画 震災後の市街地復興に向け官民合同で計画作りが進み、2017年3月に国の認可を受けた。期間は今年3月までで、計画地は中心市街地の約116ヘクタール。中心市街地の居住人口4400人、新規出店数52件などの目標値を掲げている。