97歳、暴走運転認める「返納したらどこにも行けぬ」 福島地裁

 
初公判が開かれた福島地裁の法廷=28日(代表撮影)

 福島市南矢野目の歩道で昨年11月、軽乗用車を暴走させ女性1人を死亡、4人にけがを負わせたとして、自動車運転処罰法違反(過失致死傷)の罪に問われた同市北沢又字樋越北、波汐國芳被告(97)の初公判は28日、福島地裁(三浦隆昭裁判長)で開かれた。波汐被告は「間違いありません」と起訴内容を認めた。

 検察側は冒頭陳述で、被告は1日1回ほど近距離の運転をしており、昨年8月には自宅の車庫入れの際に乗用車を損傷。長女やケアマネジャーから運転をやめるよう注意されていたと指摘した。

 証拠調べでは、検察側が事故発生の数日前、被告の運転に不安を感じた長女がタクシー会社に相談したが個人契約を断られたとする長女の調書を読み上げた。

 被告人質問では、被告が被害者や遺族に対し「本当に申し訳ないことをしてしまった」と謝罪し「慌てていて、アクセルとブレーキが近くにあり、的確に運転できなかった」と供述、ブレーキとアクセルを踏み間違えたとの認識を示した。

 また運転免許証を返納する意思があったかを問われ、「いつかは免許を返納するべきだと思ったが、返納すればどこにも行けなくなる(と思った)」と供述した。

 次回公判は15日午後3時から。被害者遺族による意見陳述などを行い、結審する予定。

 起訴状などによると、波汐被告は昨年11月19日午後4時45分ごろ、歩道に乗り上げた軽乗用車をそのまま進行。ブレーキとアクセルを間違えて少なくとも時速60キロまで加速し、歩行中の女性=当時(42)=をはねて死亡させ、4人にけがを負わせた、としている。

 遺族涙「最大限罰して」

 深く一礼し、入廷した波汐被告はおぼつかない足取りで、つえを突き、証言台に立った。被告人質問では検察官や弁護側の質問を聞き返したり、質問と答えがかみ合わなかったりする場面もあった。

 法廷には被害者参加制度を利用し、事故で亡くなった女性の夫が参加した。起訴状や「法が許す限り最大限に罰してほしいと思います」などとする被害者遺族の供述調書が読み上げられると、ハンカチを目に当て涙する夫のすすり泣く声が法廷に響いた。