民事訴訟手続き、ウェブ会議で 福島県内、進むオンライン化

 
ウェブ会議を利用して依頼者と共に手続きを進める紺野弁護士(左)。オンライン化の利点を実感している

 これまで書面や対面でのやりとりが基本だった民事訴訟のオンライン化が進んでいる。福島県内では争点整理手続きなどでウェブ会議が盛んに利用されているほか、民事訴訟法の改正に伴い6月ごろからは書面のオンライン提出も始まる予定だ。オンライン化で利用者の利便性向上が期待されるが、専門家は情報漏えいのリスクが高まるなどの弊害も指摘する。

 争点整理迅速化

 「裁判所に記録を持参する必要もなく、移動時間が短縮された」。県弁護士会に所属する紺野明弘弁護士(47)は担当する訴訟の8割でオンラインを活用している。県内では現在、非公開の争点整理手続きがオンライン化されており、紺野弁護士はウェブ会議システムを使い、依頼者と共に事務所にいながら、別の場所にいる裁判官や相手方と話し合いを進める。会議では、書面を画面上で共有するなどしながら争点を絞っていく。

 紺野弁護士には依頼者から「裁判所は敷居が高く抵抗があるが、事務所なら足を運べる」との声が寄せられており、「心理的な負担の軽減につながっている」と効果を実感する。

 昨年の民事訴訟法改正に伴い、2025年度までには提訴から判決まで全ての手続きをオンライン上で完結できるようになる。県外の一部の裁判所では書面のオンライン提出がスタートしており、福島地裁本庁も開始に向け準備中だ。同地裁の担当者は「法律が成立したばかりで運用の問題点を検証している。オンラインの特質を生かした司法サービスを提供したい」と意欲を語る。

 情報漏えい懸念

 東北大大学院の今津綾子准教授(37)=民事訴訟法=は、民事訴訟のオンライン化により「当事者が参加しやすくなるほか、データを共有することで話し合いの結果の可視化も可能になる」と利点を語る。一方、「(ウェブ会議の様子などを)無断で録画するなど、情報漏えいの懸念がある」と言及した。

 また、オンライン化により首都圏など大都市部の大手弁護士への依頼が増え、各地域の弁護士の仕事が減る可能性もあると指摘。「身近に法律の専門家がいるという安心感は大きい。各地域の弁護士が法律相談などで視野を広げ、ニーズを掘り起こすことができるかが問われている」とした。

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 改正民事訴訟法 訴状や準備書面の提出がオンラインでできるようになり、口頭弁論や証人尋問はウェブ会議で実施できる。訴状や判決など裁判の記録は原則、裁判所が電子データで管理する。関係者のウェブ上での記録閲覧、ダウンロードも可能。2025年度までに段階的に実施される。